認知症で何も覚えていないから。。。
認知症の介護では何の達成感もない。
自分の時間、労力とお金をどれだけ使っても「ありがとう」の一言すらない。軽度の時などはお礼を言えるし、重度でも言える時期もあり、個人差はあるが。
お礼を言うどころか、「娘(または嫁)は何もしてくれない」「ご飯も作ってくれない」「今日も何も食べさせてもらってない」などと他人にグチを言う。すっかり忘れている。
認知症だと知らない人は信じるかもしれない。たまにしか会いに来ない親戚とかは。
いろいろ世話をしても、世話をしたことになっていない。してあげたことの記憶が、まるで消えたかのようだ。実際は記憶はあっても思い出せないだけなのだが。
認知症の人の介護はむなしい。治らないだけでなく努力したことも「ない」に等しい。それでも他にかわってくれる人がいないから、むなしくても続けなければならない。
何とか時間をやりくりして、休みをつぶして介護に行っても、「今日は誰も来なかった」と言われるのなら行かなくても同じだ。ヘルパーさんに全部まかせてもいい。
そんなふうに思うこともある。が、そうだろうか。本人、時々は思い出しているかもしれない。認知症の人の記憶は「突然もどる」から。脳の血流のいい時などに。
息子や娘や嫁が帰ったあと、一人になってから突然「来てくれてよかった。お礼を言うのを忘れたけど今度会ったら「ありがとう」と言おう」と思っているかもしれない。
次に会う時にはすっかりそのことを忘れているから、結果としては同じことだが。
「認知症で何も覚えていないから、何をしてあげてもムダだ」と思うのは誤りだ。記憶は残る。思い出す能力に欠けているだけだから。
毎日のように脳細胞が自滅していても、記憶は簡単には消えない。それは言える。