これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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認知症、虐待の記憶は扁桃体が。。

認知症でも、虐待されれば覚えている。

アルツハイマー病が認知症の代表的な疾患だが、これは脳の海馬という「記憶を形成する部分」の細胞が減少し(やせ細って)起こるそうだ。

だから、認知症だと「数分前の記憶」すらない人もいる。

だが、認知症の人を何人か見ていると「記憶について、何か違う」と思うことがある。記憶には何種類かのルートがあるかもしれないと。

「薬を食後に飲む」というような重要なことは覚えていないのに、「娘にバカにされた」というような嫌なこと(忘れたらいいこと)は覚えているようだ。

海馬が働いてないから、悪口を言われたというエピソード記憶はない。
「この人は悪い人」というようなイメージ記憶だろうか。

そういうことがあると、次の日から娘を避けるようになる。
娘が会いに来ても、戸口で「おまえは役に立たないから帰って」と拒絶する。

息子が母の日に花束をくれたことは覚えていないのに、親子げんかになって息子に「さっさとくたばれ」と言われた場合も、何かしら記憶にあるらしい。

幸せな記憶は留まらず、不幸な記憶だけが残る。
もしそうだとしたら、毎日を楽しく生きるのは極めて困難だと言える。

これについて長い間ずっと不思議に思っていたが、脳科学の書物をいくつか読んで「記憶には裏道がある」と知り、やっと納得できた。

海馬の近くにある扁桃体が「記憶の裏道」だそうだ。

身の危険を感じるほどの、極度に嫌な経験(恐怖や不安)があった場合、海馬を経由せずに、「嫌な記憶」を形成し定着させるらしい。

海馬を通さないので「いつ、どこで」というような具体的な記憶にはならない。

また、覚えているという自覚もない。「いつ、どこで」というエピソードを伴わないので、「わけのわからない不安感」といったものとして脳に残る。

今日もメデイアでは老人介護施設での虐待が話題にあがっている。

「虐待したって、どうせ覚えていない」と思っていないだろうか。
介護職員に限らず、在宅介護する家族も。

「嫌なこと」は別のルート(裏道)で脳に刻まれる。
認知症介護の心得の一つとして、マニュアルに入れるべきだろう。

親身に世話してあげても覚えていないから感謝もされない。
だが、虐待に近いようなことをすると、避けたり介護拒否したりする。

嫌な記憶、虐待されたという記憶はなくても、加害者を見ると「当時の恐怖感・不安感」がよみがえるらしい。だから避ける。

動物に備わった自己防衛システムのようだ。


認知症の人からの暴言や暴力に耐えてばかりいると、たまには「くそばばあ」とか「きちがいばあさん」とか言って反撃してやりたいものだ。

どんなにすっきりすることか。だが、それを言ったらおしまいだ。
認知症でも「嫌なこと」は覚えている。





             <That's Ninchi Show 2 No.1145>