認知症、身近な人を悪者にするのは。。
世話をすればするほど憎まれる。
普通ではあり得ないことだが、認知症では「よくある」ことだ。
最も身近にいて最も長い時間世話している人が憎まれる。
認知症では「物が盗まれた」というような「被害妄想」があるが、
本人から加害者(悪人)だと名指しされるのは、多くの場合、
最も身近な人で、熱心に介護している人、家族だ。
いつも側にいて面倒をみてくれる人に対して、普通なら「ここにあった財布がない。盗んだでしょ」などとは言わない。
普通の老人ならば言わない。たとえ少しばかり疑ったとしても、じっとガマンして口に出すことはないだろう。
気を悪くして世話してくれなくなったら困るからだ。
普通の人はそう、これからのこと(未来)を考えることができる。
また、これまで熱心に介護してくれたという記憶(過去)から、「この人が盗むはずはない」と判断することも普通の人ならできる。
だが、認知症の人はそれらが全くできない。
認知症の人は思ったことをそのまま遠慮なく口に出すことが多い。
言いたいことを言わずにはいられない。ガマンできない。
感情を理性で抑えること(自制)が難しいのだろう。
「こんなことを言うと相手が傷つく」という他者への配慮や、「その結果、自分が不利な立場になる」という予測はできない。
これからのこと(未来)を思って行動することが難しいようだ。
同じように過去の記憶データを参照して「この人は盗みをするような人ではない。信頼できる」と判断することができない。
いままでのこと(過去)を思って行動することも難しいらしい。
そういうわけで、家の中で何かが紛失した時、たとえば「財布がいつもの場所にない」時などは短絡的に「盗まれた」と訴える。
本人が「いつもとは別の所に置いた」としても、本人はその記憶がないので、本人以外の家族の犯行だと思うのだろう。
本人は「自分には過失はない」という絶大な自信があるからだ。
「認知症で記憶があやふやだ」という認識がないからでもある。
認知症の人は最も身近で世話してくれる人を悪人にする。
それはなぜかというと、脳が壊れているからだ。
記憶力だけでなく、自制力も適切に判断する能力も失われている。
それがわかっていても、悪口を言われながら世話するなんて、
割りに合わないし、やりきれない。
世話をすればするほど憎まれる、そんなことあり得ない。
だが、認知症では「よくあること」だ。
<That's Ninchi Show 2 No.1287>