認知症と脳梗塞の味覚障害と。。
味覚も実は「脳が作っている」のだろうか。
脳機能障害により「幻視・幻聴」が現れることから、視覚や聴覚に関しては脳が大いに関わっていることが知られている。
見えるのは脳が作って見せてくれているわけで、聞こえるのも同じく脳が作成した音を聞かせてくれている結果なのだろう。
脳機能障害のない普通の人でも「見えている景色の何割かは脳が記憶データをもとに作成した画像」だという。
散歩しながら見ている周囲の景観の全てが目で瞬時にとらえた画像だと思っているが、実はそうではない。
動きながらという短い時間にそれほど大量の画像データは処理できないから、何割かは過去のデータで補足しているらしい。
ところで、体調が悪いときなど「何を食べてもおいしくない」とか「何を食べてもしょっぱい(または苦い)」とかいうことがある。
味覚もどうやら脳機能と大きく関連するようだ。
認知症の人が突然「この食事には毒が入っている」などと言って食べなくなることがある。
また何の理由も言わずに突然何を出されても手をつけようとしなくなることもある。
それらの時は食べさせようとしても断固拒否して食べない。
認知症の人が食べなくなると、「食べ物だという認識がない」「目の前のものが食べ物に見えていない」と考えられているが、
果たしてそれだけだろうか。味覚障害もあるのでは?
「毒が入っている」ような苦い味がしたのかもしれない。
その上に「毒殺される」という被害妄想があれば、食べない。
これに関連した記事が少し前にネットに出ていた。
脳梗塞の発作後に味覚がおかしくなって、「コーラを飲むと洗剤の味がする」ようになったという。
コーラは甘くておいしいが洗剤はとても飲めたものではない。
味覚障害とは「甘くも辛くもなく、何の味も感じられない」のかと思っていたが、そういう例だけではないらしい。
甘いものが洗剤のように苦くなる、それも味覚障害だ。
うちの親も「毒が入っている」と言って食べなかったことがある。
この時、脳梗塞が起きていたのかもしれない。
比較的軽い脳梗塞発作の場合、誰も気がつかないことが多い。
嘔吐や下痢や「発音が不明瞭」また「片側の手足の動きがおかしい」という脳梗塞に特徴的な症状が見られないからだ。
「毒が入っている」と言っていた時に少しも脳梗塞のせいだとは思わなかったから、「なぜこんなことを言うのか」わからなかった。
食べたくないから「つくり話」で逃れようとしているのか、「わがままな婆さんだ」とさえ思った。
認知症の人が突然「食べなくなる」のには必ず理由がある。
その理由は一つだけではなく、いくつもあり重複することもある。
本人は身体の不調を訴えることが少ないので、その理由が周囲の人にはわからない。
わかってあげることが必要だと思う。
かなり難しいことだが、本人の立場で考えるように努力し、本人に寄り添って見守っていればわかるのだろうか。
<That's Ninchi Show 2 No.1293>
参考:日刊ゲンダイデジタル2017・7・24から「ラモス氏のインタビュー」一部分
「病気をして、決定的に変わってしまったのが味覚と嗅覚です。大好きだったものが全部うまくなくなった。私は肉とブラジルの豆とキムチと枝豆と生ビール、それとコーヒーとコーラだけあればいいというくらい毎日食べ続けてきたのに、ほとんど全部ダメだった。コーラなんか洗剤みたいです。」