「認知症なら普通のこと」だと知れば。。
「認知症なら、それが普通だよ」と言ってもらえたら。
親が認知症になってからというもの、毎日毎日が驚きの連続だった。
それまで、認知症について全くと言っていいほど知らなかったから。
見たことも聞いたこともないような現実に際して、どうすればいいのかわからず途方にくれるばかりだった。
自分だって認知症の「世間なみの知識」はあったはずだが、それと現実とのギャップの大きさと言ったら・・・
言葉では説明できないくらい、それほどの差がある。
「こんなこと半世紀生きてきて初めて」という場面に日常的に頻繁に遭遇するので、対応に悩み、解決に向けて奮闘するのだが、
なにせ「前例のないことで、周囲からの助言もほとんどなく」上手に対応できず、問題解決どころか事態悪化を招くことが多い。
そこで困ってしまって介護の専門職の人に相談したのだが、ここでも多くの場合は解決には到らなかった。
介護施設の相談員の人は誰でもたいてい先ず「一番困っていることは何ですか」と問うのだが、これが難問だった。
自分としては「困っていることばかり」で「ことごとく困っている」わけで、優劣はつかないし、全てを解決したいと思っていたので、
何から何まで全部、困っていることを話してしまった。
するとそれらのことは全部「認知症なら普通、よくあること」だと言われ、拍子抜けしたというか、がっかりしたというか、
(驚かれもせず少しも同情してもらえず、がっかりしたのだが、
驚くようなことでも「特に大変」なことでもなかったからだ)
「みんなそうなんだ」とわかって妙に安心したというか、
肩の力が抜けたような気持ちになった。
何の解決法も提示されなかったけれど、なぜか気分がすっきりとして帰宅したという記憶がある。
「特別ではなく、認知症なら普通のことだ」とわかっただけで、
たったそれだけのことで気持ちがラクになるのだろうか。
さて、親が終末期になった今なら「最も困ったことは何か」の質問に対して即座に答えることができる。
うちの親の場合は「介護拒否」だ。
当時はなぜ答えられなかったのだろう?
<That's Ninchi Show 2 No.1246>