認知症の人が自殺をほのめかしたら。。
認知症の人への対応は実に難しい。
いろいろな場面での適切な対応法は、一般例としてはある。
それを前もって知っているなら少しはいい対応ができるはずだ。
しかし、「認知症の人の言うことを否定してはいけない」と教えられても、現実での実際の応用法がよくわからず困ることもある。
うちの親の例だと、次のような対応困難な状況があった。
サ高住に入居してずいぶんたって慣れてきた頃だが、「こんな身体になって楽しいことが全然ない」と言うようになった。
テレビドラマを見るのを楽しみにしていた人だったが、認知症の記憶障害でドラマを見ても話の内容がわからず、見なくなった。
友人との買い物や外食も好んでいたのだが、できなくなった。
認知症によるバランス障害で歩行困難となったからだ。
グチを繰り返していたが、ある日突然「生きていても楽しいことが何もないから自殺したい」と言うようになった。
こんな発言に対してどういう対応が正しいのだろう。
「そんなことはないよ。長生きしたら孫の花嫁姿も見られるし、楽しいことはたくさんあるから」と言おうとしたが、
それでは本人の言うことを否定したことになる。
否定してはいけないとなると、どう言えばいいのだろう。
マニュアルには「否定せずに話題を変える」という方法もある。
そこで「自殺するっていうけど、簡単じゃないし苦しいよ。痛いよ。」と言ったら、本人は黙ってしまった。
しばらくして「舌を噛み切るって、やっぱり痛いかな?」と言う。
「ものすごく痛いよ、きっと。やめたほうがいい」と言うと、この時はこれで終了となった。
次の日もその次の日も同じ会話を繰り返していたが、いつの間にか自殺願望が消え、この話をしなくなった。
当時は対応に悩み、眠ろうとしても眠れない日もあったが、今から思えばこの程度で終わってよかった。
もしそのままどんどん悪化して「ラクに死ねるように殺してほしい」などと言われたりしたら、どれだけ困ったことか。
認知症の親を殺してしまったという事件では、「親に何度も何度もしつこく頼まれて」というケースもある。
普通なら頼まれても殺しはしないが、介護している家族の精神状態だって普通ではなくなっているから。
認知症介護と無関係な人には「どうして?」の事件だ。
ところで、認知症の人が「自殺する」と言い続ける時の最も適切な対応とはどういうものなのだろう。
また、どういう理由でこのような発言となったのだろう。
そして、なぜ突然このような発言が消えたのだろう。
<That's Ninchi Show 2 No.1247>