認知症の人は「ひと」に救われる。。
ひと(人間)は結局ひとによって救われる。
「天は自ら助くるものを助く」というように、他人に頼らずに自分で努力することが一番だとされている。
もっともだ。だが、認知症の人とその家族にはあてはまらない。
認知症の人は初期の短い期間を除いて「合理的な判断」ができないので、自分で努力して難局を打開しようなどとは思わない。
つまり、ほとんどの人が現在の状況を正しくは理解できず、努力して改善しようという意識を持つことがない。
ほとんどの認知症の人は自分で自分を助けることはできない。
認知症の人の家族は努力できる。
しかし、残念なことにその努力は多くの場合で報われない。
「他人に頼らずに努力すれば天の救いがある」はずなのに、現実はそうではなく、「天に見放された」と思うこともある。
「自分さえガマンすれば」と一人で努力すればするほど、逆に状況は悪くなることが多い。
どれだけがんばっても救われない。
たとえれば、太平洋の真ん中で一人小船で流されて、待っても待っても救いの船が来ないようなものだし、
長く暗いトンネルを一人でずっと歩いていて、どこまで歩いても歩き疲れても、前方に全く光が見えてこないようなものだ。
認知症介護では家族は「他人に頼らずに」ではなく、「他人に頼りながら」努力することでのみ救われるように思う。
特効薬があったり、脳障害の治療を得意とする医師がいるなら、他人に頼らずとも家族だけで何とかなるかもしれない。
だが、それはずっとずっと未来のことだ。
今は薬にも医師にも頼れない。
認知症の人とその家族を困難な状況から救うのは、薬でもなく医師でもなく「ひと」だと思う。
ひとはひとによって救われる。
そのつながりを取り戻すことが今の社会に必要だと思う。
<That's Ninchi Show 2 No.1221>