転倒骨折、大腿骨用ボルト。。
ボルトを見て思い出したことがある。
少し前からパソコンデスクの椅子(通販で買った金属製の回転椅子)の肘掛がぐらぐらしていた。
ひっくり返して状態を見てみたら、肘掛を本体につないでいた黒い金属製ボルトがどうやらダメになっている。
そのボルトを見て、四年前の五月の母の葬式の日を思い出した。
骨を拾っていたら、係員の人が「こんなものが・・」と見せてくれたのが焼けてアツアツの黒っぽいボルトだった。
それを見て、この骨はまさしく母のものだと実感させられた。骨になってしまったら誰のものかなんてわかりはしない。
そのボルトは大腿骨骨折の手術の痕跡だから。まだ認知症を発症する前に自宅で転んで、八十二歳ぐらいで手術するはめになった。
ボルトを入れてから十年ぐらい長生きしていたのだが、ボルトのあたりが痛むことがあって、しょっちゅう不満をもらしていた。
再手術してボルトをはずすこともできたのだが、医師は痛みどめをくれるだけで再手術には反対していたらしい。
「手術で入院すると認知症になる可能性がある」とか、「加齢(老化)が進んでいるので再手術で歩けなくなるかもしれない」とかで、
「再手術はお勧めしない」と言われたそうだ。
斎場で思いがけず目にして、「これがその長年悩ませてきたボルトか」と感慨は深かった。
その大腿骨用のボルトと椅子の肘掛用のボルト、奇妙なことに大きさや形状がよく似ている。
人間様に使うボルトが椅子の部品と「ほぼ同じ」だなんて、もう少し工夫がなされていてもいいのに。
うちの椅子のボルトは十年でダメになったが、大腿骨用のボルトは耐久性はどうなのだろうか。
母の主治医は十年も使用するとは思っていなかったかもしれない。
八十歳を越えた高齢者があと十年も長生きするとは。
今はどのようなボルトを使っているのだろう。
十四年も経っているからには「それなりに進化した優れもの」の大腿骨用ボルトができているのでは?
そうあってほしい。
そうでないと安心して年をとれないではないか。
<That's Ninchi Show 2 No.1212>