親が認知症になって、世間とのズレ。。
世間は認知症を軽く見過ぎている。
「もの忘れ」という症状だけを見れば、それほど深刻に思えないからだろうが、ほとんどの場合はそんな程度ではすまない。
「認知症は脳機能障害だ」という観点からすれば、どれだけ深刻で大変な状況にあるかが想像できるだろう。
脳は全てをコントロールしている。感情も行動も、理性も生物としての自己防衛反応も、脳が正常に働いてこそだ。
うちの親を例にすれば、「~障害」の見本市のようだ。
記憶障害、言語障害、嚥下障害、バランス障害、左半身の身体障害、体温調節機能障害、あげればキリがない。
一つ一つの障害は軽度で生命維持に問題はなくても、これだけ脳機能障害が重複したら、重度の障害者と言えるだろう。
現在の公的な解釈によれば、認知症の老人は「重度心身障害者」とされていない。
世間の認識もそれに合わせているのか、認知症を実態よりも相当、格段に軽く考えているようだ。
うちの家族もそうだった。親が認知症になるまでは「いつかは同居して在宅介護」と考えていた。
今から思うと、あきれる。認知症について何も知らないからそんな無謀な計画を立てていたんだと、自らの無知無関心に驚く。
「何も知らない」だけではない。知ろうとしないから、入ってくる情報が少ないから、判断の誤りもあった。
政府の「住み慣れた自宅で最後まで」という在宅介護の推進や、薬品会社の「認知症は病気、医師に相談」という宣伝に洗脳されて。
「家族による在宅介護」で、医師に認知症治療薬を処方してもらえば、治ることはなくても現状維持できる、そう思っていた。
あとになってわかる。在宅介護が一番ではないし、今の治療薬のレベルでは気休めにしかならないことが。
家族だけが「何とか悪化を防ごう。治そう」と思い、焦っているが、医師も介護士もそれほど熱心には見えないのはそのせいだ。
認知症という複合した脳機能障害に対して、今の医療は無力だ。薬でどうにかできるようなレベルではない。
脳機能について素人の家族が、マニュアルを手に介護して、ほとんどの人が改善できるというレベルでもない。
多くの家族が「努力しても結果はついてこない」と落胆する。
<That's Ninchi Show 2 No.1160>