これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

FC2ブログに引っ越しました。週一回か二回は更新しています。

介護の破綻、一年以内で。。

「介護殺人」などの悲劇は決して特殊例ではない。

世間一般では特殊例だと思うかもしれないが、少なくとも認知症の人を自宅で介護した経験のある人はそうは思わない。

誰にでも起こることで、自分だって「あと一歩の所」や「ぎりぎりの境界、崖っぷち」にいたと言う人も多い。

「ガマンにガマンを重ねた結果、精神的に追い詰められて」のことなので、何年もの苦労があったと(常識的には)想像される。

ところが、NHKの調査によると意外にも「介護を始めて一年以内が26%」だったらしい。 

NHK NEWS WEB の「介護殺人 見えてきた実態」に詳しく記載されている。
調査結果の部分を抜き出すと以下。

介護を始めて3年以内に事件を起こしていたケースが半数を超える53%、▽中でも1年以内は26%と、実に4分の1に上っていました。(※2010年からの6年間に起きた『介護殺人』138件のうち、介護期間が判明した77件の内訳)

 認知症介護 は「世間の常識」で考えられる範囲を越えているようだ。

常識では「長年の介護ストレスが原因」と理解されているが、認知症の介護に関しては「短期間の介護ストレス」も原因となる。

認知症の介護では、短期間でも「長期間積み重なったストレス」に匹敵するぐらいの量のストレスがあるということになる。

常識を外れた「異常に多い」量のストレスにさらされた結果だろう。

また、量だけでなく「ストレスの質」も、一般常識では考えられないような深刻でダメージの強いものが多い。「格段に異質なストレス」の結果でもある。

これらの異常なストレスは認知症の人を介護していると誰にでもある。特例ではなく、普遍的なことだ。

上手に介護できている例もあるが、認知症は個人差が激しいことによるもので、程度の差によってストレスの量と質にも差が出るからだ。

では、期間的に見て在宅介護の限界は最短どのくらいなのだろうか。 

前述の記事(NHK NEWS WEB、介護殺人 見えてきた実態)には、在宅介護二ヶ月で破綻という例が紹介されている。

世間一般では「何年も介護している人が多くいるのに、二ヶ月もガマンできないとは」という目で批判するのだろうか。

認知症を知らないから、そんなことが言える。

認知症の人と24時間一緒にいるとわかる。二日や三日ぐらい平気だと思っていても、それが十倍や百倍の長さに感じられることだろう。

二ヶ月で受けたストレスは二年や二十年に匹敵するかもしれない。自分の親が、家族が認知症になって初めて理解できることなのかもしれないが。

親が認知症になった時、実際問題として、どうすればいいのだろう。

家族による認知症の在宅介護は極めて困難なものだという前提で、一人で抱え込むことなく、条件を整えてから始めるのがいいのだが、

「介護を担うのは、自分しかいない」という場合も多い。

在宅介護はあくまでも短期間、長期的には施設介護という方向で「期間限定」というプレミアムを自分に付けてあげればいいと思う。

「三ヶ月だけなら」または「半年だけなら」ということなら、まだマシだ。

延々と続く苦労の日々、「いつまでかわからない、どれだけガマンさせられるのか不明」というような状態が絶望へと追いやるから。

全く逃げ道がないのと、数ヶ月後には解放されるという逃げ道(施設入所など)があるのとでは、苦労は同じでも心理的には大きく違ってくるだろう。

介護の継続には、逃げ道を確保することが最も重要なのかもしれない。

<That's Ninchi Show 2 No.1157>