がんばらない・ガマンしない介護という理想。。
介護は「がんばる」ものだし「がまんする」ものだ。
何年も前から「がんばらない介護を」と推奨されてはいるが、現実としてどうだろうか。がんばらずに介護できるだろうか。
初めて認知症の人を介護するとなると、がんばって対処法を習得する必要があるし、どの対処法も普通の人にとっては難しいものだ。
「話をする」だけでも特別な配慮がいる。
たとえば「認知症の人の言うことを否定してはいけない」などだ。
真夏に「もうすぐ正月だ」と言われても、否定してはいけない。
「三十五度もあるのに、何言ってんの」と答えそうになるのをガマンして。
お気軽に、鼻歌まじりに楽しくできるものではない。
ほとんどの人が(ある程度)がんばらないとできないものだと思う。
また、別の側面から見ると「がんばる」ことの裏側には必ず「ガマン」がある。
認知症の介護は「ガマンの継続」で成り立っていると言える。
「否定してはいけない」から、言いたいことが言えないわけで、自分の言いたいことをいつもいつもガマンしなければならない。
同様に、認知症の人を「責めて(とがめて)はいけない」から、どんなに被害を受けても黙っているしかない。いつもいつもガマンしなければならない。
認知症の人を介護すると、「がんばる」ことによるストレス反応と、「ガマンする」ことによるストレス反応が同時に起きると考えていい。
ストレス反応は一時的には生存に有利だが、継続して慢性化すると不利になる。
慢性化だけでも心身に悪影響を及ぼすのだが、「がんばる系ストレス」と「ガマンする系ストレス」とが重なって複合化すると、なお一層悪い結果となる。
がんばる系ストレスがあると、 アドレナリンなどの神経伝達物質が放出される。
このストレス反応が慢性化すると、高血圧・心臓病・糖尿病などの原因となる。
特に、コルチゾールと記憶障害との関連性が気になる。
コルチゾールが過剰になると海馬が萎縮することが実証されている。
つまり、ストレスによる慢性的なストレス反応が認知症の原因ということだ。
「認知症の人にストレスを与えてはいけない」のは、これに基づくものだろう。
認知症の人に「がんばらせない」で、「ガマンさせない」でいくには、その代わりに、
介護する者が継続的に「がんばり、ガマンする」ことが求められる。
そんな状況で、心身の健康を維持しながら介護していけるのだろうか。
どう考えても無理なように思う。
少人数の家庭で、誰もが「がんばらないで」生活できるだろうか。
「がんばらない介護」や「ガマンしないでいい介護」の実践は可能なのだろうか。
理想ではなく、現実に即した対策を考えるべきだと思う。
<That's Ninchi Show 2 No.1153>