これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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認知症、がんばって説明しても。。

認知症の人に一生懸命説明しても逆効果という場合がある。

「一生懸命がんばると、逆効果」というのは、普通は理解できない。
普通は「がんばればがんばるほど良い結果につながる」からだ。

認知症の介護は介護する側(ケアラー)がどんなに努力しても成果が出ないことが多い。「がんばらない介護を」と言われる理由の一つだ。

他の仕事なら、がんばればそれだけの何かが得られ、達成感があるものだが、認知症の介護はそうはいかない。

多くの場合、がんばってもがんばっても、むなしいだけだ。

「がんばらない介護」が奨励されているのは、がんばって燃え尽きること(=介護の破綻)を避けるためだろう。

がんばらずに見守ることで、長期間の介護の継続が可能になる。

これとはまた別の側面だが、「がんばると逆によくない結果になる」ということが指摘されている。

認知症の人に対して、丁寧に長々と説明する」ことがそれだ。

放送大学に「認知症を考える」という講座があり、その第九回で専門医(お多福もの忘れクリニック院長)の先生がそのように言っている。

認知症の人は生活上多くの面で不都合が生じ、その言動によって思いもよらず不都合な結果をもたらし、周囲の人々に迷惑をかける。

それを少しでも減らしたいと思うのが家族で、だからこそ何かが起こるたびに次には改善されるように、説明してわかってもらおうとする。

記憶力が低下していても、「十を言えば一ぐらいは頭に残る」と信じて。

一見良さそうに見えるし、「熱心だから、介護に真剣に取り組んでいて一生懸命だから」こそできるように見える。

よくわかってない人に、言葉を選んで丁寧に話すのは容易ではない。時間もかかるし、忍耐力も体力も気力も必要で、相当疲れる。

しかし、これが逆効果だというのがその専門医の先生の意見だ。

家族が一生懸命になって言えば言うほど、認知症の本人は「自分が責められている。何も悪いことをしていないのに叱責されている」と思うらしい。

確かに、記憶障害のある本人にとっては何度失敗していても、「一度も失敗したことがない」わけだ。失敗した記憶も自覚もないから。

同様に、周囲の人に迷惑をかけたという記憶もないとしたら、「次は迷惑をかけないように~してください」と言われても、反発するだけだろう。

全く無関係の話に付き合わされたと思って、怒り出すこともあるだろう。

うちの親の時を思い出すと、うちの家族もやはり「十を言ったら一ぐらいは通じる」と思って皆がんばったものだ。

結果は少しも通じないことばかり。「がんばって説明しても疲れるだけで、無意味」ということが何度も何度もあった。

たとえば、お薬カレンダーの件だ。
カレンダーの順番のように薬を飲んでくれると期待して、期待外れだった。

「ちゃんと順番に飲んでください」と何度も何度も説明した。
丁寧に簡単な言葉で言えばわかってくれると思ったが、結果は全滅。

それでやっと「認知症の人は説得できない」という結論に達した。

長時間の説得は全く効果がなかったし、何度も何度も丁寧に説明しても少しもわかってもらえなかった。

わかってもらえなかったことでガックリしていたのだが、その努力が逆に本人を精神的に苦しめていたとは知らなかった。

こういう不適切な対応も、認知症を悪化させる要因の一つだ。

知らなかった事とは言え、うちの親には大変申し訳ない事をしたと思う。
我が家の介護はいつもそれ、そのようなことばかりだ。





              <That's Ninchi Show 2 No.1147>