これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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認知症の暴力的抵抗、意思疎通と不安感が。。

認知症で暴れる」、どうしたらいいのだろう?

認知症には比較的穏やかなタイプから、かなり攻撃的なタイプまである。
それによって認知症の介護の困難さも大きく差が出てくる。

うちの親もある時期から「暴れる」ようになり、どうしようかと悩んだものだ。
介護スタッフを蹴ったり、ひっかいたり。とても見ていられない。

「なぜ、どういう時に」そういう行動に至るかを考えてみた。

ほとんどが「介護拒否」に由来していた。
お風呂に入りたくないのに、スタッフが服を脱がせようとする時などだ。

スタッフは「入浴しないのなら、せめて着替えだけでも」という好意で脱がせようとしていたのだが、それが本人には伝わらず「暴れる」わけだ。

本人の意思は「お風呂も嫌だし、身体をふくだけでも嫌だし、着替えも嫌だ」ということなのだろう。

そういう気持ちや、そういう訴えを無視された時に、暴れる。
本人の「嫌だ」という意思表示だった。

このことを、うちの家族は「暴力的抵抗」と呼んでいた。

「今はお風呂に入りたくない」と言葉に出せばいいのだが、どうせ伝わらないと本人が判断したのだろうか。

認知症の頭では短時間に適切な言葉を探すのが難しいから、言葉で訴えることができなくなったのかもしれない。

また、当初は言葉が出ていても、しだいに言葉よりも先に手が出るようになるのは「ガマンができない」という認知症の特性によるものだろう。

暴力的抵抗の理由はわかった。だが、その根は深い。
根源は「伝わらない」そして「不安感」という所にあると思う。

本人の意思がケアラー(介護者)に伝わらないし、その逆でケアラー(家族や介護スタッフ等、介護者)の意思も本人には伝わらない。

双方の気持ちが「伝わらない」ことの結果が、暴力的抵抗だった。

もう一つの「不安感」、こちらの要素も大きい。
本人の不安感もさることながら、家族の不安感がそれに匹敵する程ある。

「家族が入浴させようとしても抵抗するのに、あるベテラン介護士さんの時は素直に言うことを聞く」というのが、何度もあった。

この介護士さんのことを全面的に信頼しているようだ。
だから、「お風呂でおぼれる」というような不安感を持つことがない。

この人は介護技術は言うまでもなく、また本人への対応も見事だ。
「いつでも、どんな時でも丁寧に笑顔で」接している。

そこが(うちの)家族とは大違いで、「安心感」を与えられるのだろう。

対応法がわかっていない家族は、たたかれたら怒るし、何回説明しても言うことを聞いてくれない時など無視して無理やり事を進めてしまう。

イライラした顔、ぶすっとした顔ばかりで、うちの家族に笑顔などない。

うちの家族は「ばか正直者」がそろっていて、演技ができないからだ。
「介護拒否されて、困った。どうしよう?」という不安感が顔に出る。

「またヘルパーさんに蹴りを入れてる。申し訳ないな、訪問介護に来てくれなくなったらどうしよう?」という不安感も、すぐに顔に出る。

認知症の人でも「表情を読む」という能力は残るらしい。

人間やサルなど集団生活をする動物にとっては生存上に必要な能力だから。
赤ちゃんが最初に獲得するのが、この能力らしい。

家族の不安な顔を見て、「お風呂に入れてもらおう」とは思えないはずだ。

ということで、うちの親の入浴は「ベテラン介護士さんの訪問日だけ」となった。
二週間に一度だが、それもしかたがない。

うちの家族に演技力があれば問題はなかったのだが、それができる人はそんなに多くはないはずだ。もしそうなら、誰でも俳優になれてしまう。

介護の技術もなく、教育もされていない普通の人(家族)ができることは限度があると思う。できないからと言って自分を責める必要はない。

できる人に頼る、それでいい。

脳が壊れた人に「何かを伝える」ことも、脳の壊れた人の「気持ちを理解する」ことも素人には至難の業だ。できなくて当然だ。

その上、その脳の壊れた人が自分の親なのだから、「いつでも笑顔で」と要求されても無理、誰でもできることではない。

そんな親の姿を見たくないのが本音、すぐにでも逃げ出したいという気持ちを抑えているだけで精一杯だ。

会った瞬間に暗い顔つきになっていても当然だ。笑顔だなんて。

世間のスタンダードとは違って、認知症の介護は必ずしも家族が一番ではなく、家族に世話してもらうのが本人の幸せだとも言えない。

「本人にとって安心できる環境は」という視点で考えてみるといい。
不安感を与えるだけの家族、もしかしたら最も有害かもしれない。



             <That's Ninchi Show 2 No.1143>