これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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徘徊しても探してくれるという安心感。。

親が「サ高住」に入居した日の解放感と安心感は忘れられない。

認知症を発症してからというもの、今の不安と将来の不安で眠ろうとしても眠れない日々だったが、その日からやっと少しは眠れるようになった。

もちろん不安感が100%消えたわけではなく、入居後の不安はあった。

「新しい環境で混乱しないか」とか、「家に帰ると言って脱走したら・・」とか「知らない町で徘徊して事故にあったら・・」とか、あげればキリがない。

最も気になったのが徘徊の危険性だ。

介護施設では夜間は表玄関は施錠されているし、昼間でも入居者の出入りを厳重に管理しているが、「サ高住」は出入りが自由だから。

「サ高住」は介護施設ではなく老人用住宅で、入居者と入居者の家族は自室の鍵とオートロックの鍵を持っていて、自由に出入りできる。

その上に、夜間は一階の事務所に当直として詰めているのは当時は「たった一人」だった。夜間の介護が必要なほど重度の入居者がいなかったので。

夜間の救急対応について管理会社に問い合わせると、もちろん一人では対応できないので、有事の際は応援要員を呼ぶようになっているとの答えだった。

このことは後日、思いがけず証明された。

うちの親が病気でもないのに深夜に救急車を呼んだ際、当直員からの連絡で担当のケアマネージャーさんが駆けつけてくれたので。

夜間は一人しか当直の人がいないことで、不安と言えば不安だったが、当時の心境では不安よりも安心感のほうが勝っていたと思う。

なぜなら、「おばあちゃんが(徘徊で)いなくなっても探してくれる人が別にいる」ということは確実だからだ。

それまでは家族だけ、少人数の家族だけだったから。

ご近所の人が一緒に探してくれる、それはない。みんな自分の仕事があるし、予定がある。仕事を休んでまで探すのは家族だけ。

家族だって仕事先の都合で抜けられないことも多い。

いくら「施設ではなく住宅」という名目であっても、「サ高住」の管理会社や担当者が入居者の徘徊を知らんぷりすることはないだろう。

そういう時は絶対に一緒に探してくれると思った。

「家族以外に頼れる人々がいる」という安心感は大きい。
都合のつかない時、仕事を休めない時に代わってくれる人がいる、それだ。

これまでは「家族同然のつきあいのご近所」という地域社会の支援や、「労働者を家族同然に大切にする企業」の寛容さがあったが、今はそれはない。

今は「代わってくれる人のいない社会」となっている。

地域社会の親身な支援と、企業の寛容さが失われた今は「老人介護の孤立化」は当然と言えば当然のなりゆきだ。

親が「サ高住」に入居してやっと「代わってくれる人」がいたわけで、自宅での在宅介護では永久に「代わってくれる人」がいないことになる。

「介護の孤立化」を防ぐには、施設の拡充しかない。

しかし、特養などは入居待機者が多く、一般の老人ホームは高くて手が届かず、施設に入居したくてもできないことが多い。

誰でも利用できるような低価格の施設を増やすことが望まれる。
もしくは「代わってくれる人がいる」という安心できる社会の再来を望む。

どちらも無理? 今の日本には不可能なこと?




             <That's Ninchi Show 2 No.1142>