認知症の特性、家族の孤立。。。
家族による認知症の介護は極めて困難だ。
その理由を考えてみると、究極的には「認知症の特性」に行き着く。
「他人ならできて、家族にはできない」のはそこに源がある。
「できない」ことで悩んだり、自分を責めたりする必要はない。
これを読むと、「なるほど」と思う。今まで「なぜだろう」と思っていたことが、「そうだったのか」だ。
「なぜ、家族による在宅介護が困難なのか」また「その困難さを、周囲の人々(近隣社会)が共感してくれないのは、なぜか」と思う。
これらの疑問も、この「9大法則」を見れば納得できる。
「家族による在宅介護の困難さ」を親戚やご近所などが共感できないのには、「第2・第3・第4・第7法則」に起因するからだろう。
「第2法則:症状の出現強度」では、身近な人に対して症状が強く出るもので、たとえば「家族だけにつらくあたる」という例だ。
たまに来る親戚やご近所の人にはわからない。よって共感できない。
「第3法則:自己有利」は、自分にとって不利なことは認めないというもので、「第4法則:まだら症状」はいわゆる「まだらボケ」だ。
本人が「自分が認知症だとは認めず、自分の失敗を家族のせい」だとして、たまに来る親戚やご近所の人に話すことがあるが、
「まだらボケ」で症状が出ていない時期なら、話し方も普通で理路整然としているから、他人は信じてしまうだろう。
いくら家族が「認知症が進んでいる」と説明しても、親戚やご近所は「しっかりしてるよ。まだ施設に行くほどはない」と言う。
ここでも共感は得られない。他人に理解してはもらえない。
「第7法則:作用反作用」は、本人へ強い対応をすると強い反応が帰ってくるというもので、「第2法則」とも関連する。
家族だから「遠慮がないから」強い言葉になることがある。家族だから、いつも一緒にいるから「ガマンしきれなくて」ということも。
他人なら「ソフトな対応、ソフトな反応」ですむ。よって、家族の苦悩は理解できないだろう。
結論として、「認知症の特性」という点で言えば、家族による介護の苦悩を周囲の人々に理解してもらうのは不可能に近い。
当事者にならないと理解できない、やはりそれだ。
もう一つ言えるのは、家族による介護よりも他人による介護のほうがラク、困難さが軽くなるということだ。
家族だけで介護するのではなく、介護職の人や友人・知人など他人を頼って(巻き込んで)介護するのがいいのだろう。
共感してもらえなくても、協力してもらえるか、そこが問題だ。
<That's Ninchi Show 2 No.1122>
<参考>
認知症をよく理解するための9大法則・1原則
第1法則 : 記憶障害に関する法則
記銘力低下:話したことも見たことも行ったことも直後には忘れてしまうほどのひどい物忘れ。同じことを繰り返すのは毎回忘れてしまうため。
全体記憶の障害:食べたことなど体験したこと全体を忘れてしまう。
記憶の逆行性喪失:現在から過去にさかのぼって忘れていくのが特徴。
第2法則 : 症状の出現強度に関する法則
より身近な者に対して認知症の症状がより強く出る。
第3法則 : 自己有利の法則
自分にとって不利なことは認めない。
第4法則 : まだら症状の法則
正常な部分と認知症として理解すべき部分とが混在する。初期から末期まで通してみられる。
第5法則 : 感情残像の法則
言ったり、聞いたり、行ったことはすぐ忘れる(記銘力低下の特徴)が、感情は残像のように残る。理性の世界から感情の世界へ。
<対応法>
a. ほめる、感謝する
b. 同情(相づちをうつ)
c. 共感(「よかったね」を付け加える)
d. 謝る、事実でなくても認める、嘘をつく(悪役を演じる俳優の気持ちで)
b. 同情(相づちをうつ)
c. 共感(「よかったね」を付け加える)
d. 謝る、事実でなくても認める、嘘をつく(悪役を演じる俳優の気持ちで)
第6法則 : こだわりの法則
ひとつのことにいつまでもこだわり続ける。説得や否定はこだわりを強めるのみ。本人が安心できるようにもってゆくことが大切
<対応法>
第7法則 : 作用・反作用の法則
認知症の人に対して強く対応すると、強い反応が返ってくる。
第8法則 :認知症症状の了解可能性に関する法則
老年期の知的機能低下の特性から全ての認知症の症状が理解・説明できる
第9法則 :衰弱の進行に関する法則
認知症の人の老化の速度は非常に速く、認知症になっていない人の約3倍のスピード。正常の高齢者の4年後の死亡率が28.4%であるのに、認知症高齢者の4年後の死亡率は83.2%(聖マリアンナ医大長谷川名誉教授の報告)。
介護に関する原則
認知症の人の形成している世界を理解し、大切にする。
その世界と現実とのギャップを感じさせないようにする。
作成:認知症の人と家族の会