これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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転倒から認知症が始まって。。。

認知症は「もの忘れ」から始まるとは限らない。

うちの親(85歳、胃ろうで寝たきり)の場合は「転倒」からだった。
歩きなれている道で、何も障害物がないのに転んだ、それだ。

心配性で慎重な性格で「転んで骨折して寝たきりにならないように」特に注意していた人だから、転んだと聞いて驚いた。

あせって小走りになったわけでもなく、ゆっくり歩いていて転ぶとは思えない。平坦で歩きやすい道なので、不思議だった。

転び方も妙だ。手をつくこともせず、頭から倒れて。頭を打って大きな「たんこぶ」ができていた。

念のため病院で頭を検査(CT)したが、異常はなかった。

それまで転倒したことはなく、転ぶとしても頭を打つようなそんなぶざまな転び方をする人ではない。ほんとうに不思議だった。

それだけに終わらず、短い間に二回も転倒が続いた。

「何かおかしい」とは思ったが、「筋力低下、老化だろう」として、そのままにしてしまった。

それが歩行困難の始まりで、ものすごく狭い歩幅で「すり足」で歩くようになり、介助がないと一人では歩けなくなっていった。

パーキンソン病の患者の歩き方と同じだが、それも当時は知らなかったから、原因が脳にあるとは思いもしなかった。

本人のかかりつけの整形外科医に相談しても、「整形外科的にはどこも悪くない」と言われ、何の解決にもならない。

骨も筋肉も神経も異常がなくて、なぜ歩けないのか。

それが不思議だった。本人が転倒をおそれるあまり(こわがり過ぎて)普通に歩けるのに故意にゆっくり歩いているのかとも思った。

家の中は一人で歩いていたが、ものすごく狭い歩幅の「すり足」で、ものすごくゆっくり、普通の何倍もの時間をかけてやっとだ。

ところが、外出時に家族が手を引いて支えてあげると、「すり足」でもなく、普通の人の速度より少し遅い程度で歩ける。

そんなことが一回や二回ではなかった。

そうなると家族は皆、「本人がわがままだから。本当は歩けるのに甘えている」と言うようになった。本人には黙っていたけれど。

心の中では、皆「困ったワガママばあさんだ」と思っていたようだ。

それが認知症のせいだとは知らず、「どこも悪くないのに歩こうとしない」と見ていた。今から思えば大きな誤解だった。

この歩行困難の原因がわかったのは何年も後になる。
認知症によるバランス障害」だと知らされてやっと納得できた。

介助者がいるとスタコラ歩けるのは、家族が支えていたらバランスをくずすことがないからだ。

あの時それがわかっていたら、もっと違う対応ができて、歩行困難の悪化を少しは抑えることもできたかもしれない。

認知症は「記憶障害」から始まるとは限らない。うちの親のように「身体障害が先で、その後に記憶障害」という場合もある。

大事なことは、「些細な違和感」だ。

認知症適齢期の人を見ていて「何かへん」「この人がまさか」というようなことがあれば、無視してはいけない。

不可解で、納得できないこと(=いつもと違うこと)があれば、それが「認知症のサイン」かもしれない。



                                <That's Ninchi Show 2 No.1118>