認知症は脳機能障害だから。。。
脳が壊れるとどうなるか、わからないから困る。
認知症は「脳機能障害」だが、「障害」という言葉で何を想像するかというと、普通「~できない。~しにくい」だろう。
ところが「脳機能障害」には、機能の低下だけでなく、亢進もある。
脳の特定部分の機能が亢進すると「音や光に過敏になる」のだが、どれだけの音や光かというと、普通の人には理解できないレベルだ。
そのようなこと、これまで全く知らなかった。親が認知症になってからわかった。「事前に知っていれば」と何度思ったことか。
「レースのカーテン越しの冬の太陽光」がまぶしくて耐えられない。
昼間もカーテンを閉めたまま。家族が開けたりしたら大騒ぎだ。
また、隣室の人の「スリッパで歩く足音」など、普通の人なら気にもせず聞き流しているような「日常音」がガマンできない。
そんな些細なことでイライラし、不機嫌になり、家族に八つ当たりする。何が何だかわからないから、家族は驚いているだけだ。
「年寄りのわがまま」ではなく、脳が壊れているからだが。
そんなことは医師でも介護士でもない普通の人にはわからない。
家族が話しかけたら「はぁー?」と聞き返すので、耳が遠い(聴力が低下している)はずだが、足音だけが気になるようだ。
「光に弱い」のは「白内障が進んだのでは?」と思ったこともある。
うちの親は何年も眼科に通って白内障の点眼薬をもらい、日に何回もせっせと点眼していた。几帳面な人だから。
だが、認知症を発症してからは「眼科に行く」と言ったのは一回だけ。
「点眼薬がなくなるから、眼科でもらってきて」と言われて、代わりにもらいに行ったのも二回ほど。こうして眼科との縁は切れた。
そういう理由から、当時は「目の老化のせい、白内障のせい」だと思っていたが、今から思えばこれも脳機能障害だったのだろう。
急激に悪化、急な変化というのは「一時的な脳の血流低下」などが原因だろう。加齢による変化は急激にはおこらない。
こういうタイプでは、「頻尿や尿漏れ、便秘や下痢、吐き気、食べ物がのどを通らない」など、さまざまな症状が突発的に出てくる。
「胃腸が悪いのかと思っていたら、原因は脳だった」ということが何回もあった。思い込みは危険だ。
脳のしくみ、一般常識としてどこまで知っているだろうか。
ほとんどの人が「よくわからない」と答えるだろう。事故や病気で脳障害となった家族がいる人を除けば。
医師でも同様だ。脳のことは医師でもよくわかっていない。
脳の専門医でも「医学書に記載がなく、前例のないケース」については、「わからない」と言うだろう。
脳科学者でも「まだ脳の全容はわからない」レベルだから、誰にたずねても「わかりません」と言われても不思議はない。
「今の脳の状態はどうなのか、どこがどう壊れているのか」も、「これからどうなるか」も、誰もわからないということだ。
認知症の介護は誰にでもできるものではない。
家族なら「できて当然」ではないし、逆に「できなくて当然」だと言うほうが正しい。
医学知識のない者に、脳障害の人の世話ができるだろうか。
できないからと言って、罪悪感を持つ必要は全くない。
家族が上手に介護できている例のほうが少ないのでは?
認知症を発症すると友人や親戚などは離れていく。
家族は「最後まで側にいる」ように努める、それだけでいいと思う。
<That's Ninchi Show 2 No.1095>