これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

FC2ブログに引っ越しました。週一回か二回は更新しています。

たった一人の介護は拷問だ。。。

「たった一人での昼夜の介護」は拷問だ。

お正月が近くになって、また介護殺人のニュースがあった。
世間は忘年会やクリスマス会で楽しんでいても。

介護の世界は別次元のようなもので、世間とは無縁だ。

今回のケースも介護する人(ケアラー)は「たった一人」で、介護に疲れての結果だとされている。

「疲れ」というより「介護に苦しめられて」の結果だろう。

これを聞いて、世間はまた「なぜ誰か周囲の人に助けを求めなかったのだろう」と疑問に思うことだろう。

「一人で介護する」などと到底できないことだ。それは世間でもわかってきたと思う。

昼も夜も目が離せないとなると、介護する家族(ケアラー)は眠ることができなくなる。一人では絶対に無理だ。

その状況を訪問診療医の長尾先生は「拷問に近い」と形容していた。
まさにそうだ。近いというより、そのものずばり。

「眠らせずに自白を強要する」拷問は歴史的事実としてある。

少人数の家族では在宅介護は難しい。
たとえ本人が嫌がっても、施設に行ってもらうことも必要だ。

少人数の家族で在宅介護を継続させるには、周囲の人の理解だけではなく、周囲の人の「手」が必要になる。

今の社会には「周囲の人の手」は期待できない。お金を出して雇うなら別だが、経済的にそれができない人には。

在宅介護を望んでいても、こういう社会では大変難しい。短期的には可能でも、長期の継続は不可能だ。

在宅介護にこだわらずに、施設介護を利用するべきだと思う。

「施設はかわいそう」などと言って、悲劇的な結末になっていいのだろうか。そっちのほうが格段にかわいそうだ。

本人が嫌がっていても、一時的なことだから。
時には感情よりも理性で決断することが必要だと思う。



             <That's Ninchi Show 2 No.1073>


参考:デジタル毎日(2015.12.7)

介護殺人 加害半数「不眠」 一部うつ状態も 本紙調査

介護している自分の家族を殺害した「介護殺人事件」44件を毎日新聞が調べたところ、半数近い20件で加害者が昼夜を問わない過酷な介護生活を強いられていたことが分かった。不眠で心身ともに疲れ果てた末に犯行に及んだとみられる。「事件当時はうつ状態」と診断された例も目立った。介護疲れによる殺人や心中は後を絶たないが、認知症や障害を抱えた家族を介護する人たちの厳しい現実が浮かび上がった。【渋江千春、向畑泰司】
     毎日新聞は2010〜14年の5年間に、首都圏1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)と近畿2府4県(大阪、京都、兵庫、滋賀、奈良、和歌山)で起きた介護殺人のうち、裁判記録を確認できたり、関係者を取材できたりした44件について、背景や動機を調べた。
     その結果、20件(45%)の加害者は昼間だけではなく真夜中も介護したり、思い悩んだりして、深刻な寝不足に陥っていた。認知症や痛みを伴う病気の患者は睡眠障害や妄想から、眠らずに介助を求め、大声を出すことも少なくないとされる。20件の加害者もこうした家族を介護しており、不眠が続いて追い詰められていたことがうかがえる。
     20件以外の加害者が不眠に悩んでいたかどうかは分からなかった。ただ、44件のうち35件(80%)について、裁判所が介護疲れを事件の主な要因と認定しており、不眠に悩んでいた加害者の割合は実際はもっと高いとみられる。他9件は貧困による将来の悲観などが背景にあったとされた。
     「不眠」の20件のうち8件の加害者は事件後の精神鑑定で「昼夜を問わない介護などで、事件当時うつ状態適応障害だった」と診断された。不眠が続いた影響で精神的に不安定になった可能性がある。
     他の事件の多くは精神鑑定がされていなかったとみられる。

    介護家庭を対象に24時間態勢で往診する兵庫県尼崎市の長尾クリニック院長、長尾和宏さんの話

     自宅で家族を介護して睡眠不足になっている人は相当いるのではないか。認知症の患者や寝たきり状態が長い人は時間の感覚が狂って昼夜が逆転することが多く、真夜中に食事やトイレの介助を求めるからだ。睡眠不足が続くと、うつ状態になりやすい。介護殺人は決して特異な例ではない。昼も夜も1人でずっと介護する生活は拷問に近い。介護ヘルパーの夜間訪問制度はあるが、対応する事業所が少なく、十分に機能していない。
     介護保険制度は介護する側を支援する視点が欠けている。休息を取りながら在宅介護できる仕組みの構築や介護する人への有益な情報提供が必要だ。