認知症の人は説得できない。。。
認知症の人を「説得する」ことはできない。
「介護を苦にして」という事件があると、世間の多くの人は次のように疑問に思うことだろう。
1.どうして一人で抱え込んでしまったのだろう?
2.どうして誰かに相談して助けを求めなかったのだろう?
3.介護保険制度があるのに、なぜ利用しなかったのだろう?
「一人で全責任を負い、一人でガマンし、一人で悩む」のでなく、「周囲の人々と協力して」だったら、そこまで追い込まれはしない。
家族の人数が少ないことが「一人で抱え込む」理由だと思う。
しかし、家族がいないなら他人に頼ればいい。周囲の人の協力がなくても、お金さえ出せば介護を手伝ってもらえる。
ここで問題となるのは「認知症の本人が嫌がる」ことだ。
訪問介護を依頼しようとすると「他人が家に来るのは嫌だ」とか「知らない人が家にいると気をつかうし、不安」とか言う。
では、デイサービス(通所介護)ならいいかというと、「知らない人ばかりの所には行きたくない」「一人では不安」と断られる。
老人は保守的で「新しいこと、変化」を嫌うものだし、認知症の人は特に不安感が強いからだろう。
その不安感がある限り、説得はできない。
「施設に行ってくれないと、家族が仕事に行けなくて困る」という事情を説明して、いくら頼んでも断られる。理解してはくれない。
だが、認知症の人には論理的思考は難しい。「嫌なことは、嫌」だけで、終わりだ。どれだけ時間をかけても説得はできない。
理論が通じないのなら感情、「親子の情」があるだろうと、情に訴えてもムダ。泣き落としもできない。
「認知症の不安感>親子の情」だと思い知らされる。
説得するのに時間と労力をかけて、その都度イライラするのではなく、「説得はできない」とした上で他の方法を考えるのがいい。
「本人が嫌がるから、介護保険制度は利用しないで全て自分一人が世話をすればいい」という選択は絶対に避けるべきだ。
本人か家族か、二者択一となったら「家族」が優先だと思う。
うちのおばあちゃん(85歳、胃ろうで寝たきり)も高齢者住宅(サ高住)に「絶対に行かない」と言って困らせてくれたものだ。
入居日前日まで嫌がっていたが、当日は本人の女学校時代からの友人に来てもらって、一緒に車に乗ってもらった。
昔話をしているうちに新居に着いて、何事もなく入居となった。
古い友人は夕方には帰り、家族も夕食後には帰ったが、本人は「家に帰る」と言い出すこともなく、ぐっすりよく眠れたらしい。
久しぶりに家族や友人が集まり、しゃべり疲れたからかもしれない。
デイサービスでも同じようにできる。一人で知らない人ばかりの所に行くことが不安だから、それで「絶対に嫌だ」となる。
誰か親しい人が一緒に行ってくれたら、本人の不安が軽減されて、「新しいこと」でもスタートできるだろう。
初回だけ一緒に行ってくれたらいい。初日の途中で帰ってもいい。
一回行けばそこはもう「知らない所」ではないし、「知らない人ばかり」ではなくなるから、次回からは不安はない。
どうすれば不安が解消されるか、そこに鍵があると思う。
<That's Ninchi Show 2 No.1070>