老人でも急変時には病院へと思っていたが。。。
看取り可能という施設がある。
介護施設だけでなく、施設のようで施設でない高齢者住宅(サ高住)の案内書にも「看取りできます」と書かれるようになった。
「老人の最期は病院で」というのは、今では「古い」考えらしい。
老健に親が入所した時、数年前だが、初めてそのことを知って自分が時代遅れの古い人間だとわかった。世の中の動きを知らないままの。
風邪引きなどの軽い病気を除いて、何かあったら施設から病院へ移すのは当然だと思っていたから。
ところが、その老健では必ずしもそうではないようで、たすかる見込みの少ない場合は「入院せずに施設で看取る」ことも多いらしい。
その点が当時は心にひっかかっていた。
「急変時にはどうしますか?」と聞かれて、「提携している病院に搬送してほしい」と答えたら、施設側はそれが意外だったようだ。
施設の医師から、長々と説得された。
入院時にすぐ駆けつける家族がいないこと、毎日病院に付き添う家族もいないことを考えると、入院しないほうがいいという意見だ。
確かにそれは言える。頼りになる家族がいないという条件ではそうだ。
病院は治療する所で「老人介護」はできないから、治療が終われば「ほったらかし」になり、家族が付き添って世話するしかない。
また、入院すると不必要な検査や延命治療もある。それを拒否することも家族にはできるだろうが、そうなると医療報酬がなくなるから、
病院側としては「提供しようという医療を拒否するなら、入院している理由はないから」と言うかもしれない。実際に言う人は少ないが。
検査や不必要な延命治療なしで、痛みをとってラクにさせるというだけの入院ならいいのだが、それは難しいのだろうか。
九十歳ぐらいになると「一日でも長く」ではなく「できるだけ苦しむことなく」その日を迎えたいと願うものだろう。
急変時に病院に行かないとしたら、痛みのケアはできるのだろうか。
「病院に搬送を」と申し出たのは、それも考えてのことだ。老健では使える薬も限定され、痛みの除去には対応できないだろう。
しかし、よくよく考えれば「認知症の人には薬物治療しにくい」から、入院しても在宅でも、薬で痛みを除去できないかもしれない。
鎮痛薬は脳の「痛みを感じる部分」に作用するもので、認知症の人で作用すべき部分の脳細胞が壊れている場合は効果はない。
ただ、認知症だから全員「薬が効かない」というわけではない。
該当部分が壊れていたら効果はないが、人によって脳細胞の壊れ方が違うので、効果が出ることもある。
各自の脳がどう壊れているか不明なので、全体として言えば「認知症の人には薬が効きにくい」ということになるのだろう。
また、痛みには個人差がある。同じだけの刺激でも、大いに痛がる人と平気な人がいる。脳(痛みを感じる脳細胞)が個人個人違うからだ。
認知症が進んで「痛みを感じる」中枢が壊れ、痛みを感じることができなくなる場合もあるらしい。これも個人個人違うとは思うが。 もしそうであったら、痛みのケアのためだけに入院する必要は全くないわけだ。延命治療を望む人以外、入院するメリットは何もないから。
昔と違って、今では在宅診療で点滴も酸素吸入もできる。
「入院しない」という選択肢が増えたのは喜ばしいことなのだろう。
その時どうするか、それを前もって考えておく必要があると思う。
<That's Ninchi Show 2 No.1023>
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