これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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認知症の親の暴力で「有罪」に。。。。。

認知症介護の困難さは、一般の人にはわかりにくい。


三年ほど前の「介護殺人」事件で、一審判決で「傷害致死」で懲役刑となったが、先日の二審では「暴力」のみで罰金刑となったという報道がある。

認知症の母が暴れて、在宅介護している息子夫婦が二人して押さえつけたのだが、老母はなくなってしまったという事件だ。

一審は裁判員裁判だったらしい。こういう場合の判決の重さは、裁判員の人がどれだけ認知症について知っているかによるだろう。

認知症介護の経験者がいるならいいが、一人もいないとしたら問題だ。誰一人として「暴れる老人」の実像が想像できないと思う。

死因となった傷を一審では「息子夫婦がつけた」とみなし、二審では「本人が暴れて自分でつけた」とみなしたので、違う判決になったようだ。

認知症の人を見たことがない人、世間一般の人からすると、「自分の命が危ないようなことをするはずがない」というのが判断の底にある。

本人がいくら暴れても、自殺行為のような激しい暴れ方はしないだろうし、高齢では「力が衰えていて」たいしたことはないと世間は思う。

認知症の在宅介護は、時には「殺すか、殺されるか」という命がけの修羅場(戦場)になるが、そのことを世間一般は全く知らされていないからだ。

普通の老人にはできないようなことを、認知症の老人はできてしまうことがある。脳のリミッターがはずれて、無制限に「力」を出すからだ。

普通の人でも非常時にはリミッターがはずれて、重たい荷物を動かせることがある。「火事場の馬鹿力」というのがそれだ。

ふだんは「馬鹿力」を出さないように脳が抑えている。いつもいつも「力」を出し切っていたら、生命が危うくなるからだ。自己防衛の一つだろう。

ともかく、大変難しい裁判だったと思う。真相は当事者しか知らない。

二審の判決後のインタビューで、被告の人が「認知症は物忘れや徘徊だけでなく、暴力もあるということをわかってほしい」と言っていた。

また「親が暴れてケガした時に、(介護している子が)起訴され有罪になるようなら、認知症の在宅介護は成り立たない」とも言っていたと思う。

認知症の在宅介護は誰にでもできるものではない。条件が整っている場合のみ可能で、それも短期間だけ、長期間は難しい。

それでもやむなく在宅介護をさせられている人が多い、それが現状だ。

これから在宅介護をする人は、いざという時のために「親の暴力」を撮影して、証拠として保存しておくのがいいかもしれない。

事件の報道内容は以下。


母親を殴るなどして死亡させたとして、傷害致死罪に問われた大阪大歯学部の元助教佐保輝之被告(55)と妻ひかる被告(51)の控訴審判決が11日、大阪高裁であった。笹野明義裁判長は、傷害致死罪で懲役8年(求刑懲役10年)とした一審大阪地裁の裁判員裁判判決を破棄し、暴行罪を認定してそれぞれ罰金20万円を言い渡した。
 一審判決は全身の損傷のうち大部分は両被告が生じさせたと認めたが、笹野裁判長は「胸の損傷が(2人の)暴行によって生じたとみるのは困難。母親が認知症の影響で暴れた可能性を考慮していない」と指摘。暴行と死亡との因果関係を否定した。
 両被告は、2011年6月に大阪市東住吉区の自宅で、輝之被告の母重子さん(当時80)の顔を殴るなどして外傷性ショックで死亡させたとして、起訴された。