これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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妻が帽子に見える男と、認知症。。。。。

「妻を帽子とまちがえた男」という題名の本がある。

こんなことがあり得るだろうか。人間と「帽子」とが同じに見えるだなんて。とても信じられない。そんなことが現実にあるとは。

脳障害の実例だそうだ。奥さんに付き添われて、愛用の帽子をかぶって診察に来た時のこと。帽子と妻、共通点は「いつも側にある」ということだけ。

診察室に入って帽子を脱いで側に置く。診察後に帰ろうとして、その帽子と、側で付き添っている奥さんと、この二つを混同してしまう。

あまりにも現実性が薄いので、笑い話にもならない。漫才のネタとしても飛躍があり過ぎる。しかし、これが臨床例、実例なのだそうだ。

我々が見ている世界は、個人個人の脳が作り出しているものらしい。よって、同じ景色を見ていても脳機能障害の人には違うように見えるとか。

この世界は相対的なもので、「絶対でも唯一でもない」ということだ。脳が違うなら、同じものを見ていても、認識された映像は人によって違う。

普通の人が、みんなが同じだと意識しているのは、各自の脳で処理された(認識された)画像が「ほぼ同じ」で「違いが少ない」からだろう。

脳機能障害があると、極端に違う。異次元と言っていいほどの違いだ。
帽子と人間が同じに見えるというような、信じられない違いがある。

認知症も脳機能障害だ。親が認知症になって、何を考えているのかわからないで困ったが、見えているものが違っているとしたら納得できる。

わけのわからない行動や意味不明な発言があると、「妻を帽子とまちがえた例」を思い出す。普通の人とは違うものが見えているのだと。

普通の人とは違う音も聞こえているだろう。違うものが見え、違う音が聞こえ、違う記憶を持つ、それが脳が壊れるということだ。

この本は医学書ではなく脳科学エッセイという分野だが、日本人が書いたのではなく、翻訳なので読みにくい。文体がやはり

親が認知症になる前にこういう種類の本を何冊か読んでおけばよかったと思うが、その頃は脳機能障害など全く関心がなかったので。

世間の多くの人も同じだろう。脳障害の人、認知症の人を理解して、社会で支えるというのは、はかない希望であり、理想に過ぎない。