介護施設にいれるのはかわいそう？

介護施設にいれるのは「かわいそう」なのだろうか。

 

世間一般の目はそうかもしれない。年をとって住み慣れた家を出て、家族に世話をしてもらえず、遠慮しながら他人と一緒にきゅうくつな思いをして暮らすのは。

 

しかし、「タンスの引き出しを開け閉めするのがうるさいと、老母をたたき殺す」というようなことを聞けば、介護施設にいたほうが幸せだったと誰でも思うだろう。

 

認知症の人が探し物を始めたら、昼も夜もない。おかまいなしだ。同居家族が眠れないだろうとか、ご近所に迷惑だろうとか、そんなことは思いもつかないから。

 

家族ならば「しかたのないこと」としてガマンし、世話を続けるのが「あたり前」と、世間一般には思われているかもしれない。だが、できる人とできない人がいる。

 

訪問介護のヘルパーさんに聞いた話だが、「息子がイライラして物を投げて窓ガラスを割ってしまった」と、窓にダンボールを貼ってしのいでいる老人もいた。

 

次の年金が入る日まではお金がなくてガラスを入れることができないらしい。息子は母にぶつけずに窓にぶつけたのだが、老人虐待の一歩手前だ。

 

世話のできない家族と一緒にいるよりも、世話をしてくれる施設にいるほうがいい。どんな施設であっても、最低限の世話は保証されている。

 

しかし、そういうほんとうに必要な人ほど施設入居が困難だ。なぜなら、親のために施設を探すのは簡単ではないからだ。そういう努力をしてくれるかどうか。

 

認知症の介護は誰にでもできるものではない。「家族による在宅介護が一番いい」とは必ずしも言えない。世間一般はそこまではわからなくても。