これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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在宅介護では心が休まる時がない

認知症の在宅介護は家族の負担が大きすぎる。
 
自分の家で、家の中で、廊下やリビングや台所で、床にウンチが落ちていないか、気をつけながら歩く。犬の散歩道を歩くのと同じように。ヒトのウンチを避けて。
 
そんなことが日常になったら、仕事に疲れて帰宅しても、自宅でも心が休まることがない。もう家に帰りたくないと思うこともあるだろう。家に帰ったらよけいに疲れる。
 
認知症の家族との同居は、身体的にも精神的にも大変きついものだ。「家がいい、施設は嫌だ」という老人の願いのために犠牲にするものはあまりに大きい。
 
「どこにでもウンチ」はまだマシ、ウンチを粘土のように遊んだり食べる人だっている。それを聞いても、よかったとは思えず、そんなになったらという不安が出てくる。
 
トイレの場所がわからないからで悪意はない、認知症のせいだから家族はそれを責めてはいけない。しかっても、本人は覚えていないから何の反省もない。
 
それがわかっていても、そ知らぬ顔で「自分は関係ない」とばかりに、後始末もしない本人を見ていると腹が立つ。手も足も動くのに、肝心なことは何もしない。
 
腹が立っても、家族は何も言えない。言っても本人を興奮させて、認知症を悪化させるだけだ。本人のためには言いたいこともガマン。しかし家族の気持ちは?
 
責めたり、とがめたり、「二度とするんじゃないぞ」と、おどしたり、不満を言ったりできたら、どんなにすっきりすることか。それが言えない、言えないでたまっていく。
 
認知症は本人が一番つらい、その苦しい気持ちをわかってあげるべきだと言うが、家族がこんな毎日に悩み、不安定な精神状態にあったら、そんな余裕はない。
 
自分のつらさ、苦しさ、不安感を克服できない状況で、他人の気持ちまで考慮して行動しろというのは無理な注文だ。そこまでの能力は普通の人にはない。
 
それに「認知症の人の気持ち」は想像しようがない。普通の脳ではないのだから。どこにも書いていないし、本人の言うことはめちゃくちゃ、支離滅裂だし。
 
家族はいつも目前の「困ったこと」を解決するだけで、それだけでも振り回されて、他のことを考える余裕などない。本人は加害者、家族は被害者としか思えない。
 
困らされ、迷惑をかけられている側の者が、「加害者」である認知症老人の気持ちを考えてあげる。そんなことができるような高潔な人格者であることが求められる。
 
認知症の介護は誰にでもできるものではない。