認知症介護は誰でもできるものではない
目に見える 成果がなく、評価もされない仕事、それが問題だ。
認知症介護で達成感は得られない。治らないし、リハビリの効果も期待できないし、周囲の人がどんなに努力しても何の成果もなく、その努力はほとんど報われない。
認知症の介護は誰でもできるものではない。単なる弱った老人ではないから。
体力と気力と想像力が、人並み以上に必要だ。それに忍耐力は特に。目立たない所で誰からも評価されず、収入の割に責任だけは重い、そんな境遇に耐える力だ。
恵まれて育った若い人にこんなきつい仕事ができるのだろうか。施設の介護スタッフはどこも若い人が多いので、いつも心配になる。ストレスに耐えていけるのかと。
親にもたたかれたことがないのに、毎日のようにボケ老人になぐられたら、ガマンできなくなってなぐり返したくもなる。どうせ認知症なら覚えていないから。
老人ホームの入居者への暴力事件はだいたいがこういう理由だろう。ストレスがたまり過ぎてキレて暴発してしまうという。
「第1発見者になってほめられ、同僚に認められたかった」というのが犯行動機。
消防士が付け火(放火)をしたのと同じだ。自分で骨折させて、「様子がおかしい」と異変を知らせていたのだから。この特養はユニット式全室個室、誰も見ていない。
光の当たらない所で、誰からも評価されず、老人介護という性質上、何の成果もないので達成感もなく、労働意欲を失っていたのだろう。
製造業や小売業なら、製品という形で、また売り上げという数字で、毎日の労働の成果が目に見えるから、達成感がある。品質やサービスの質を評価してもらえる。
介護以外のサービス業は顧客の満足度という形でサービスの質を評価されるから、励みになり働きがいに通じる。介護は無理だ。顧客が認知症老人だから。
誰からもほめられない、それが認知症介護だ。「ほめて育てる」式にほめられて大きくなった世代の人には厳しい環境かもしれない。