認知症の妄想モンスター
その特性のせいで人間関係に悩み、社会的なストレスを避けて孤立しがちになる。
認知症の人は精神状態が不安定で、いつもストレスを抱えている。これは病気の性質上避けられない。症状によって周囲の人と「ずれ」が生じ、人間関係も難しくなる。
人間関係がうまくできず孤立するようになったり、また自分から他人との交渉を避け、家にひきこもったりする。いわゆる社会性を失って孤独になり疎外感を持つ。
それだけでも精神疾患を引き起こすには十分だが、その上に妄想が重なる。
普通の人には見えていないものが見えて、よけいに不安がつのる。それを周囲の人に訴えても笑って相手にしてくれない。家族すら誰も信じてくれないときは、絶望感。
そういう幻視や幻聴が毎日のようにあって、その中で暮らしていたら、誰でも頭がおかしくなるだろう。毎日がホラーとサスペンスの連続で、リアルにその中にいたら。
うちのおばあちゃんは幻視幻聴が「殺人系」だったから、いつも「助けて。誰かぁ」の日々だった。異常行動(BPSD)が激しくなり認知症だと気づいた頃のことだ。
妄想モンスターがどこにでもいて、ドアや窓を密閉していても隙間(鍵穴やエアコンの噴出し口)から入ってくるのが見えるらしい。おびえてしまって大変な騒ぎだ。
そんな妄想モンスターと一緒に暮らしていたら、精神病になる。なってたと思う。精神科医にみせるべきだったが、当時すでに「外出拒否」で通院すらできなかった。
訪問診療の先生は認知症の患者も多いのに「内科医で精神科は専門外」と、そ知らぬ顔で通用するのだろうか。精神科も学んで適時対応してもらえればたすかる。
「殺される」と騒いでいたのは、要介護1のころだ。それから数年経った今は、そういう騒ぎはなくなった。妄想はあっても、「殺人系」ではなくおとなしいものだ。
もう今では妄想モンスターは見えないのだろうか、それともすっかり慣れてモンスターとお友達になったか、見えるけど害はなく、殺されないとやっとわかったのだろうか。
聞いても答えはない。おばあちゃんの頭の中をのぞいてみたいものだ。