これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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これが認知症なんだ (357) 悪い人?

<That's Ninchi Show  No.357 >
 
認知症は悲しいことに「一番身近で世話をしている人」を悪者にする。
 
おばあちゃんの被害妄想が長きに渡って続いている。「悪い人によって窓の外に寝かされる」という妄想だ。毎日その不安におびえながら暮らしていて笑顔がない。
 
その悪い人は誰なのか、たずねても本人は何も答えない。最近は記憶能力や言語能力が落ちてきて、質問に答えられない。いつも会話は一方通行だ。
 
老人マンションの部屋に来てくれるのは、ヘルパーさん、ケアマネージャーさん、訪問リハビリの先生、訪問診療の先生、訪問歯科の先生、訪問薬局の薬剤師さん。
 
その中の誰が「悪い人」にされているのだろう。たぶんケアマネージャーさんか、ヘルパーさんのうちの誰か、だと思う。「寝かせる」という仕事をしてくれるのは。
 
一番世話になっているのに、「悪い人」にしてしまうとは。いったい頭の中はどうなっているのか知りたいものだ。「そんなはずはない」と思えないのだろうか。
 
そんな悪い人に世話をしてもらわないと生きていけない、そんなことを日々認知症の頭で考えているのだったら、それはそれは不幸な話だ。
 
これを解決するために、「家族と同居」という方法を選ぶとしよう。それでも結果は同じだろう。今度は家族が、娘や息子や嫁が「悪い人」になるだけだ。
 
家族と同居のほうが不安感が大きいかもしれない。介護技術は劣るし、知識もなく、ヘルパーさんのように何事もガマンして「腫れ物を触る」ように大事にはできない。
 
ガマンできずに、大声で叱りとばすことも多々あるだろう。老人マンションでヘルパーさん達にやさしくしてもらっているのとは大違いだ。いつも丁寧に言えるわけがない。
 
「家族と同居」であっても、このように条件が悪いと妄想は消えることはない。
 
この妄想、どうしたら消えるのだろう。認知症で記憶力が低下しているのに、いったん妄想が始まるとなかなかその妄想を忘れることがない。皮肉なものだ。
 
もっと進んで、脳の血流がいっそう悪くなれば妄想は確実に消える。妄想を作り出す能力すらなくなるから。それを思えば今はまだマシだ。
 
今のままでいい、それでいい。