これが認知症なんだ (356) 妄想分析
<That's Ninchi Show No.356 >
なぜ妄想が出ているかを考える。
不安だから。では、何が不安のモト、原因なのかを考える。
それがわかったら、対策を考え、実行する。本人が安心すると、妄想が消える。
「悪い人によって窓の外(バルコニー)に寝かされた」という被害妄想が続行中だ。
いったいどこからこんな状況を思いついたのだろう。もう何年もテレビは見ていないから、二時間ドラマのせいではない。五年も前のドラマを覚えていれば別だが。
新聞も雑誌も何年も読んでいない。もう文字を見ても記号としてしか認識できないだろう。よって、この妄想の背景が文字情報からということは考えられない。
テレビのニュースなら可能性はほんの少しある。老人マンションの食堂には大型のテレビがあり、昼食時と夕食時には必ずテレビがついているから。
当時は「初の黒人大統領」で当選から就任まで連日のようにテレビに出ていたから。
最近のニュースでは、尼崎の親族監禁殺人事件、これが何となく気になる。毎日のように報道されていて、「マンションのバルコニーの一角に老女を放置」という点が。
内容はともあれ、きっかけとなる不安がなかったら、どんな妄想も出ることはない。
「バルコニーに寝かされる」のではないかという不安があるのは、なぜだろう。
おばあちゃんは常に誰かに動かしてもらっている。今では一人で(自力で)移動することができない。トイレと食堂ぐらいだが、その都度ベッドまで戻してもらう。
ヘルパーさんに起こしてもらって、寝かせてもらう。毎日がその繰り返しだ。
自室の自分のベッドに寝かせてもらうと安心できるが、別の場所に連れて行かれたら困る。ちゃんとベッドに戻してくれるのかな、という不安でもあるのだろうか。
そんなことを不安に思うかどうか、ちょっと考えられない。それとも空間の認識がずれてきて、自分のベッドにいるのに窓の外にいるとでも思っているのだろうか。
もしくは、誰かに「おとなしくしないと、外に寝かせますよ」と言われたと思い込んでいるのかもしれない。いつも暴れてヘルパーさん達を困らせているから。
たたいたり、爪を立てたり、ひっかいたり、蹴りをいれたり、数々の暴力的抵抗(介護拒否)をしたことを本人が少しでも覚えていたら、その可能性はある。
「それだけ悪いことをしたら、子供なら罰として外で立たされる、きっと自分も外に寝かされるに違いない」と思うようになったのでは。そしてその不安が日々拡大して・・
その思い込みがこの妄想の原因かもしれない。「外に寝かされるかもしれない」という不安感から「外に寝かされた」妄想が作られ、かわいそうな毎日になっている。
自分のベッドで安心して寝ているはずなのに、記憶では窓の外で寝ていたことになっていて、「自分は不幸だ。悪い人がいて」と嘆き、毎日の不安感に暗く沈んでいる。
この不安はどうしようもなさそうだ。もとが思い込みだったら、誰が何と言ってもそれは消えない・・・認知症だから。果たして解決法があるのだろうか。