認知症だから不満しか言えない?
おばあちゃんの気持ちがわからない。
家族の誰かの顔を見るとグチばかり訴える。誰が行っても同じだ。かわいがっていた孫でも、誰でも。何が不満なのか、全然見当がつかない。
孫が結婚した時には、ひ孫の誕生を楽しみにしていたのに、生まれた時には認知症が進んでいて、少しも喜んでいなかった。誕生祝いを出すのも惜しんだぐらいだ。
そんなわけで生まれた子を見せに行っても、無関心。おばあちゃんを笑顔にすることはできない。普通なら、よその子であっても赤ちゃんを見ると微笑むものだが。
「生きていても何の楽しみもない」といつも言う。赤ちゃんの成長を見るのは楽しくないのだろうか。孫夫婦は何度も子供を連れて会いに行っているのに。
そんな程度では癒されないほど、認知症という病気は苦しいのかもしれない。
家族が何人も頻繁に通って話を聞いていても、一日に十数回も何十回もヘルパーさんが部屋まで見に来てくれて、世話をしてくれていても、不幸だと思っている。
こんな病気になったのは確かに不幸だ。本人にしかわからないだろう、ほんとうのところは。何とかしてあげたくても、どうしようもない。
認知症だから、不満しか言えないのだろうか。