これが認知症なんだ (349) 常識でも
<That's Ninchi Show No.349 >
認知症の人は時に周りの人が見えていないものが見え、聞こえていない音が聞こえる。幻視幻聴がある。そしてそれを本人は真実であり事実だと信じて疑わない。
しかし、それを周囲の人に訴えると必ず否定される。誰にも見えていないし、聞こえていないから当然だ。本人が「消防や警察に電話して」と言っても無視される。
本人の気持ちはどうだろう。窓から火事が起きているのが見えるのに、周りの人は皆「火事なんかない」と言うし、ドアの陰に不審者がいたのに、「いない」と言う。
だからマニュアルは「認知症の人の言うことを否定しない」となっている。ただし、介護マニュアルは主に介護職の人を対象にして作られていて、家族向けではない。
介護職の人は時間限定であり、責任分担があるが、家族は時間無制限であり、全責任を負わされている。立場と条件がまったく違うから同じようにはできない。
家族は介護マニュアルのようにできなくても当然であって、そんなことを求めるほうがおかしいとも言える。その家族なりの方法でクリアーできていればそれでいい。
「否定しない」が認知症介護の常識でも、家族にはそれがすべてあてはまるとは言えないだろう。個々のケースによっては、否定するほうがいいこともあるはずだ。
「貯金を娘や息子が使ってしまった」とか、「隠していたタンス預金も使われた」とか「財布から一万円札が抜き取られた」とか(妄想で)思い込んでいる場合がある。
それらを否定しないということはできない。そんなことを肯定するほうがいいはずはない。「親の金を使い込むような子になってしまった」と悲しませるだけではないか。
家族のための従来型とは違う「認知症介護マニュアル」が必要だと思う。家族ならば否定してもいい場合もあるような気がするのだが。