これが認知症なんだ (348) 孤独だ
<That's Ninchi Show No.348 >
認知症老人は孤独だ。共感してくれる人がいない。
認知症になると孤独になる。同じ病気の人と親しくして悩みを聞いてもらうことはないし、同じ病気の人から「自分もそうだ。そう思う。」と共感してもらうこともない。
他の病気なら、病院の待合室などで同じ悩みを持った人と話をする機会があり、グチを言い、また情報交換することで少しは心が癒される。
仲が良かった友人でも、認知症となると遠慮するようになり、つきあいがなくなる。しばらくはいいが、家族ではないのでガマンし続けることはできない。
認知症の人を理解し、そのむちゃくちゃな言動をゆるす。そこまでして友人関係を続けようと思う老人はいない。残り少ない余生は大事に使いたいだろう。
では同じ認知症の人となら、同じ立場だから仲良くできるのでは、と思うだろう。だが残念ながらそうではない。この病気は同じ病気だからといって親しくはなれない。
脳が一人一人違うように、認知症の人の世界も一つしかない。「脳の壊れ方」がまるっきり同じなら、それなら「共感できる」かもしれないが、そんなことはあり得ない。
認知症老人は時に幻視幻聴があり、それが真実であり事実であると信じている。それと同じものが見え、同じ音が聞こえる、その場合にのみ共感できる。
それを共感できる人は一人もいない。だから認知症老人は常に孤独で、誰にも理解されていないという不安感がある。周囲の人が信じられなくもなる。
そういう寂しさや孤独感を癒すものが何もない。趣味が続けられるだけの脳の機能が残っていれば別だが。テレビすら楽しめない、短期記憶ができないから。
共感してくれる人がいれば、もっと心を穏やかにして過ごせるだろう。いつもイライラして不安そうな顔をせずとも、笑って過ごせるようになる。
とにかく話を聞く。そして共感する(ふりをする)だけでいい。安心感が得られる。この安心感こそが異常行動(BPSD)を予防し改善させるための唯一の薬だ。
認知症老人は孤独だ。孤独を癒すことが症状の改善につながる第一歩だろう。