これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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老人のストレス

老人だってストレスが最大の敵だ。
 
年をとって、隠居暮らしの老人は何もストレスなどないように見える。社会的責任も家族への責任もなくなって気楽なものだ。好きなことをしていればいいのだから。
 
もう少し老人についての知識があればそうは思わないだろう。社会人の教養として「老人学」も必要だと思う。この超高齢化社会を支えていくためには。
 
老人は意外にもストレスの多い毎日を送っているようだ。中学生のようにストレスがたまって「キレる老人」が増えている。うまくストレスを解消できないとそうなる。
 
子供から大人になる時期に「心の問題」が多発するように、老化が進んでいく時期もまた心が不安定になるようだ。脳の老化が心理的な悪影響を与えるのだろうか。
 
加齢とともに、脳の前頭葉が萎縮して、自制つまり衝動的な行動を抑制するという機能がそこなわれ、ガマンすることができなくなると言われている。
 
認知症が出てなくても、老人はガマンができなくて自己中心的で、ときにはキレて暴走するものだったわけだ。皆が皆、年をとると丸くなって好々爺になるとは限らない。
 
今までの社会は「絆の力」でキレる老人を暴走させないようにしてきたのだろう。地域共同体や職業共同体の中で、それなりに老人の尊厳を保ちつつ見守ってきた。
 
年をとって、思うように手足が動かない。痛いところだらけで、治ることがない。そんな身体では行きたい所にも行けない。家族は少なく、連れて行ってくれる人がない。
 
少し考えただけでもこれだけ多くのストレスを老人は抱えている。その上に、飲みにくい薬を山ほど飲まねばならないし、高血圧や高血糖だと食事制限まである。
 
「何十年もガマンしてきたのに、まだガマンしろというのか」と思うこともあるだろう。「先が短いのだから、ガマンしないで言いたいことを言う」とも思うに違いない。
 
胃や肝臓が悪い老人に飲酒をやめてほしいことがある。が、ストレス解消の方法として酒を飲むしかない場合は、「長生きするために酒を飲むな」と言ってもきかない。
 
ストレス解消の方法をとりあげられたら、それが大きなストレスになって、身体に不調をもたらし、飲酒によるダメージよりも強くなることもある。
 
「少量ならいい」と認めてあげるしかないだろう。それによって寿命が少し縮むかもしれないが、高齢になると「明日をも知れない」身なのだから。
 
一日一日を満足して過ごしていれば、「いい人生だった」と思いながら逝くことができるはずだ。高齢者にとっては日常の「生活の質」が何より大事になる。
 
何日か何ヶ月か、ほんの少し長生きするためにガマンするより、ガマンしないで満足して逝くほうを望むだろう。ストレスがないと反対に長生きするかもしれない。
 
「これぐらいのガマン」と若い人は思うようなことでも老人にとっては苦痛だ。脳が自制できなくなっているのに自制しろという、できないことを強制されるのだから。
 
糖尿病の老人に甘いものをやめるように言うのも同じだ。「先のない老人には好きなようにさせる」と昔から言われてきたが、ある程度は認めるべきだろう。
 
施設や病院にいると融通はきかない。制限食をガマンして食べることになる。家族にできるのは頻繁に差し入れをしたり、外食に連れて行ったりすることぐらいだ。
 
介護や医療の関係者にも、老人の生活の質(QOL)をもう少し理解して、ときには大目に見てくれることを望む。担当医の指示があるから難しいかもしれないが。
 
一度考えてみてほしい。長く生きることだけではなく、質が大事だということを。