これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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これが認知症なんだ (338) 協力を求める

<That's Ninchi Show  No.338 >
 
誰にも頼らず、家族だけで認知症の人の介護ができるだろうか。
 
認知症の介護は大変だ。その大変さは世間一般が思っているようなレベルではない。世間の認識をはるかに越えていて、一人や二人の少人数の家族では無理だ。
 
しかしながら、家族だけで認知症老人の介護をしている例も少なくない。ヘルパーさんも頼まず、ケアマネージャーさんに相談することもなく、ご近所に頼ることもなく。
 
他人に頼れないのは、頼りたくないということだろうか。
 
本人が「他人様の世話になりたくない」とか「他人が家の中にいると落ち着かない、気苦労があるから嫌だ」とか言うのだろう。老人は保守的だから。
 
認知症が出る前は違っただろう。統計によると、老後の介護については最も多い意見が、「施設で世話をしてもらう」ことだそうだ。家族に面倒をかけたくないから。
 
認知症の発病後は判断力も低下している。本人は今後の予測もできない。家族に将来どんな大きな負担がかかるか、そこまで思いやる能力もない。
 
判断能力がないのだから、本人の意思は無視してもいいだろう。
 
また一方で家族の側の、「他人に頼りたくない」という気持ちもある。責任感もあるが、身内でもないのに迷惑だろうという遠慮がある。
 
あまりにも状態が悪いので「身内でも大変なのに他人を巻き込むのは申し訳ない」と思うかもしれない。そんなひどい姿を見せたくないという気持ちもあるだろう。
 
認知症の知識のない人は、見たら絶対に「ひく」とわかるから。あとずさりする、それほど発病前とは様変わりしている。「様子が変」どころではなく、逃げたくなる。
 
それを見ても手伝ってくれる人は必ずいる。逃げる人ばかりではないはずだ。認知症の介護は一人や二人では不可能で、多くの人の協力がなくては続けられない。
 
ご近所なり、友人知人なり、できるだけたくさんの人に声をかけ、手伝ってもらう。その中の何人かでも協力してくれたらそれでいい。それで肩の荷が軽くなる。
 
発病からしばらくは、「自分ひとりが耐えればいい、犠牲者は一人でいい」と思うかもしれない。最初はそう思う。一ヶ月や二ヶ月ならそれでもいいだろう。
 
それが何年にもなる。十年、十五年、二十年だ。耐えられるはずがない。
 
「たった一人の介護」は悲劇を生む。認知症の介護は個人的問題ではすまない。少人数では支えきれないのは明らかだから、地域全体の問題として考えるべきだ。