認知症老人を避難させるには
災害時などに老人を緊急避難させるのは簡単ではない。動作が遅いから短時間では避難させられないだろう。認知症のない人でもそうだ。
老人施設など特に認知症の老人ばかりの所は困難どころか不可能に近い。
一人の認知症老人につき職員さんが一人ついていても難しいだろう。それなのに、少人数の職員で大勢の老人を避難させるなどどう考えても無理だ。
そこで老人施設の近くの住民に、災害時の避難のお手伝いを頼めば・・ということが最近言われ出した。それなら問題なく全員が短時間に避難できる、というねらいだ。
しかし、これは「素直に言うことを聞く老人ばかり」という前提条件の下だけの話で、現実とは合わない。「命の危険がある」とせかされ、さっと動くのは正常な人だけだ。
うちのおばあちゃんは「攻撃的な認知症」だ。嫌なこと、気に入らないことは、たたいたり、足でけったりして抵抗する。介護拒否にはヘルパーさんも手を焼いている。
もし災害時に近隣の人が来て、避難させようとしたらどうだろう。おばあちゃんは、
「知らない人が突然自分を連れ出そうとする」と抵抗するかもしれない。
「寒いから出たくない。もう何の楽しみもないから生きていてもしかたがない」と言って布団にもぐり、かたくなに避難を拒否するかもしれない。
常識では考えられない行動をする人たちだ。人数だけ集めたら簡単に動かせると思うのだろうが、もっと認知症について現実を知ることが必要だろう。
認知症老人を避難させるには問題が多い。解決できるだろうか。