これが認知症なんだ (294) 正解はない
<That's Ninchi Show No.294 >
正解は一つ、そんな単純なものではない。認知症の介護は。
介護職の方々に「どうしたらいいのでしょう」と質問しても、はっきりとした答えが出ないことが多いのは、そういうことかもしれない。答えがわからないのではなく。
戦後教育の弊害なのか、受験教育に重点を置き過ぎたせいか、問題解決にあたってはじっくり考えずに速やかに正解を探す、そんな癖がある。
選択肢を出してもらい、正しいのはどれか選んでマークしようとする。何もないところから、思案して、独自に解決方法を考え出すということができない。
自分で考えることもできず、選択肢の中から自分で選ぶこともできない場合もある。わからないので、「多くの人が選んでいるから、これ」と安易に決定してしまう。
認知症の介護は違う。個々のケースによって対応は異なるから、「みんなが選んでいるから、これ」というようにはいかない。脳は複雑、答えは一つとは限らない。
誰にでもあてはまる正解はない。ある意味、選択肢すべてが正解だとも言える。
速やかにたった一つの正解を探す癖がついていると、正解のない介護の問題にぶつかると、混乱し、何も考えられなくなる。
認知症の介護には、「たった一つの正解」はない。マニュアルのようにもいかない。一人一人脳が違うように、個々のケースによって対応も違う。正解は無数にある。
(2012年9月)