これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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これが認知症なんだ (292) 後悔しないように

<That's Ninchi Show  No.292 >
 
認知症老人の家族は、たとえれば無期懲役の囚人と同じだ。
 
それぐらいのストレスがある。場合によっては、終身刑になるかもしれない。目に見えない鉄格子で、自由を束縛されている。心の自由を、行動の自由を。
 
認知症老人を一人にしておけないから、短期間であってもどこへも行けない。まして旅行なんて。介護費用は年々高くなるから、自由にお金も使えない。
 
自由をとりもどすのは、ずっとずっと先だ。今の老人は長生きだ。施設には九十歳以上の老人がざらにいる。百歳だってそれほど珍しくはない。
 
老人を見送ってやっと自由に時間を使い、お金を使える。介護費用を払うために働き、自分の老後など考えられなかったが、やっと自分のために貯金ができる。
 
何年になるかわからないが、親のためにそこまでして(自分の時間をさいて)、いざ解放されたときに何を思うだろう。親孝行できたと自分を納得させるだけでは?
 
どんな一日も、かけがえのない自分の大事な一日だ。自分の自由に使う時間を少しだけとっておいてもいい。終身刑にならないとも限らないのだから。
 
介護していると言うと、「後悔のないように」とよく言われる。これは存分に介護しなさいという意味だけではない。解放された時の自分のための言葉でもある。
 
その時を想像してみよう。振り返ってみて、何年かの人生をムダにしたと思うか、充実していたと思えるか。この違いは大きい。
 
後悔しないように。
                                   (2012年9月)