聞こえていない?
老人が聞き返すのは聞こえていないだけではない。
老人は何度も聞き返すから、もっと大声で言わないといけないのかと思う。
が、声の大きさの問題でも、声の高さ(周波数、老化によって聞こえにくい音域が生じる)の問題でもないこともある。
認知症の場合は、「音は聞こえていても、その意味がわからない」ということがある。
知っていたはずの言葉を思い出せず、意味がわからない。
聞いたことはあるけど何だったかわからない、そういうことだ。
それでもわからないと言うのが恥ずかしいから、聞こえなかったふりをする。
老人はプライドが高い。そのプライドを守るためにウソをつくこともある。
そういう時は同じ言葉を何度繰り返しても、耳元で大声で言っても伝わらない。別の簡単な言葉に言い換える必要がある。
文字数、音節が長くならないように、短く、ゆっくり、はっきりと発音してあげないとわからないだろう。認知症の脳は一度に処理できる情報量が極端に少ない。
また、脳の言語処理の部分が壊れていると、言葉が聞こえていても、言葉としてでなく、風の音や雨だれの音と同じでしかない。
一時的な脳の血流不全で言語処理能力の低下がないこともない。
こうなると何回も大声で叫んでも、何も伝わらない。
脳が聞いていないからだ。
おばあちゃんは認知症が出てからは、話しかけても返事をしないことが多くなった。聞き返すこともなく、知らんぷりということが。
反応がないのは不気味だ。
聞こえていないのか、わかっていないのか、脳が聞いていない(言葉を理解していない)のか、どれかなんだろうが、区別がつかない。認知症は難しい。
注: 補聴器がないと聞こえない人の場合、補聴器の電源が入っているか、
電池が切れていないか、その確認も必要。