これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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これが認知症なんだ (286) 不安の分析

<That's Ninchi Show  No.286 >
 
認知症老人の不安は、どうすれば消えるのだろう。
 
不安感が認知症の異常行動(BPSD)を増大させているそうだ。それをなくすには、不安のもとは何かを探り当てて、ふさわしい処置をすることだろう。
 
個人個人で不安のもとは違うから、個々の家族で対処法は考えねばならない。中には、誰にでもあてはまるような不安もある。将来への不安だ。
 
一般的な将来不安をあげてみると、次のようになる。
 
1.経済的なもの  老後資金が不足しないか、財産を守れるか、など。
 
2.身体的なもの  手足が不自由になったり、寝たきりになるのでは、など。
 
3.認知症の進行  本人に自覚がある場合、このまま進むとどうなるのか、とか、
             記憶障害が進んで何もわからなくなることへの不安。
 
4.自己消滅     認知症が進んで自分が誰かすらわからなくなる、
             自分が消えてしまうことへの不安。死への恐怖。
 
日常的な不安もある。
 
5.孤独        誰も側にいない、いても頼りにできない、など。
 
6.記憶障害     家電の操作など知っていたことの記憶が出てこなくなるため、
             一人では生活できない。何をするにも不安感がある。
 
経済的不安から生まれた妄想が、娘や息子を泥棒呼ばわりさせるのだろう。お金がなくなると困る→家族以外は通帳や貸し金庫を使えない→もし家族が使ってしまったら老後資金が消える→家族に財産を盗まれた、というふうに。
 
この不安をどうしたらいいかだが、解決法があるのだろうか。「認知症老人の言うことを否定してはいけない」というが、否定しないで安心させるわけ? 家族が盗んだと言い張っているのに。嵐が過ぎるのを待つしかないようだが。
 
将来不安(1.2.3.4.)については、家族は何もできないかもしれない。ただ、日常の不安(5.6.)は家族でも解決できる。経済的、時間的に余裕があればだが。
老人が一人でいる時間を極力減らすことで、不安感が減るようだ。
 
あちこちに電話をかけまくるとか、家族がちょっと離れると家の中を探しまくるとかは、一人でいることへの不安から起こるのだろう。
 
本人も自分は頼りない、どこかおかしいと自覚していることもある、認知症だとは思っていなくても。だから、頼りにする人を探す。いつも誰かがいると安心できる。
 
うちのおばあちゃんは、老人マンションに入居することで、この日常の不安は消えたようだ。朝、昼、晩と一日に何回もヘルパーさんが自室に来てくれ、それ以外の時でも管理室に電話すれば、いつでも誰かが応対してくれて、部屋まで見に来てくれる。
 
寝たきりになっても、このままマンションでヘルパーさん達に世話をしてもらって暮らせる、そんな風にも近頃は思っているようだ。だから、将来不安についてもかなり軽減されている。一人暮らしの時はさぞ不安だったことだろう。
 
ただ、マンションの家賃が高いのはずっと気にしているから、経済的不安は依然として残り、いまだに「お金がらみの妄想」が出てくる。これはどうしようもない。
 
どんなに使っても余るほどの老後資金のある人、それ以外は無理だ。将来不安を解消するのは難しい。とりのぞくことはできない。
 
不安への対処法として、「言葉の力」もある。「だいじょうぶ」と何回も言って本人を暗示にかけること、根拠を示す必要はない、認知症では理解できないから。
 
さらに言えば、家族が不安な顔や心配そうな顔、困って悩んでいる顔を本人に見せないことが、不安感の軽減につながる。これが一番難しい。ヘルパーさん達のように笑顔でいつも接することだ。家族にはかなり無理な注文だが。
 
認知症老人の不安、その原因を推察し、方法を考えて、不安を解消させる。そうすれば介護も少しはラクになる。この努力は報われる、確実に。
                                     (2012年8月)