これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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これが認知症なんだ (283) 食の変化

<That's Ninchi Show  No.283 >
 
食べるものの好み、量の変化と認知症とは関連があるようだ
 
認知症の発症は、注意して見ていないと気づかないものだ。が、あとから考えてみたら、発症前と発症後では実に多くのさまざまなことが違っていて、どうしてこの違いを見過ごしてしまったのか悔やまれることがある。
 
その一つとして、食べることだ。食べものの好みとか、食べる量が違う。うちのおばあちゃんは発病前は「健康おたく」だったので、健康にいいといわれるものを好んで摂り、血圧やコレステロールを気にして食べるものや量を制限していた。
 
認知症が出てからは、そんなことはおかまいなし。以前は、ご飯はお茶碗に六割ぐらいしか食べられないと言っていたのに、二膳は食べる。老人マンションの食堂ではご飯のおかわりができないので、入居当初は不満を言っていた。
 
マンションの食事は、味はいいけど量が全然足らないと不平を言う。そこで、アラカルトのメニューから副菜(肉類を中心としたおかず)を追加して、量を増やしたら、ご飯が一膳でも文句を言わなくなった。老人とは思えない。
 
誕生日にはいつも15cmか18cmくらいのホールケーキを買ってみんなで食べるのだが、おばあちゃんは毎回「生クリームは苦手、胃もたれする」と言って、ほんの少々、ものすごく小さく切った一切れしか食べれなかった。
 
認知症が出てからは違う。ホールケーキの四分の一ぐらいの大きな一切れをぺろり。年寄りとは思えない食べっぷり、まったく胃もたれをしていない様子だった。
 
都合で家族が集まれず、18cmの苺生クリームケーキが半分、余ってしまったので、持って帰ろうとすると、おばあちゃんから声がかかった。「明日の朝、食べるから置いといて」と言う。信じられないような発言。
 
半信半疑ながら、食べるというのに無視できないので、老人マンションの冷蔵庫に入れて帰った。老人一人でそんなに食べれるのかなと思いながら。生クリームはあぶらっこいから苦手と言っていたのは、ウソだったのだろうか。
 
以前は、野菜中心で糖質も制限し、減塩、少量、といった食習慣だった。それが認知症になってからは、まったく逆の食習慣になった。肉類中心でこってりしたものをたっぷり食べる。
 
ほんとうはそういう好みだったのかもしれない。「こってり」は健康に悪いから、長生きするために「あっさり」を選んでいたのだろう。認知症になって「自己抑制」というタガがはずれて、好きなものを好きなだけ食べるようになった。そういうことだ。
 
食べるものの好み、量の変化、これも認知症の予測に使える。気をつけていれば、早期発見、早期治療ができるだろう。
 
他のこだわりと同様に、食べ物へのこだわりも一つの鍵になる。その人なりの「こだわり」が消えているとき、「年のせい」でなく認知症を疑うことだ。
                                     (2012年8月)