これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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これが認知症なんだ (281) これから

<That's Ninchi Show  No.281 >
 
介護に携わっている人々のこと、一般にどれだけ知られているのだろうか。
 
介護と関係のない時は、これほどたくさんの人が介護の現場で働いているとは思わなかった。介護保険制度が始まって十年ぐらいたつが、いまだにあまり知られていない業種だろう。(2000年4月から施行)
 
どこでどんな仕事をしているのか、はっきりとはイメージができないのは、老人施設というものの特性で、地域社会から隔絶しているからだろう。
 
老人の世話、という言葉からは、乳児の世話の延長線にあるように誤解される。そんな単純なものではないのに。わがままで頑固な老人を相手にするのは、「サービス業だから」とガマンできるラインを超えることも多い。
 
認知症がなければまだマシで、その上に狂人まがいの認知症老人の世話まである。ときにはあまりにも無知な家族による理不尽なクレームが来たりもする。施設に入所してから認知症が進んだとか、歩行困難がひどくなったとか。
 
それを防ぐためには、老人だけでなく家族の面倒もみないといけない。何の知識もなく不満ばかり言う家族に、正しい知識を教えて理解してもらうのも仕事に含まれる。認知症は治らない、最善を尽くしても必ず進行する、ということを。
 
頭のおかしい老人と暮らしていると、家族だって精神的に正常でいられるかどうか。
やり場のないストレスを施設や介護職の人々にぶつけることもあるだろう。
 
それも「サービス業だから」とガマンして、いつでも「笑顔で介護」する。そんなにも忍耐を強いられる仕事だと、世間は理解できているのだろうか。
 
仕事がきついのに収入は増えない。たまに老人の家族から感謝の言葉があるだけで、誰からも評価されない。高齢化社会を陰で支えているという使命感だけだ。それだけで続くとは思えない。離職者が多いのも納得できる。
 
きつい仕事を続けられるのは中高年だけかと思っていたが、驚いたことに、介護の現場はどこでも若い人が意外と多い。こんな体力的にも精神的にもきつく忍耐力のいる仕事だが、ゆたかに育った若い人がガマンできるのだろうか。
 
ただ、他の業界と同様に、三十代、四十代が少ないようだ。バブル後の、失われた十年だか二十年だかの不況のせいかもしれない。また、子育て世代には無理な職場だという理由もあるだろう。
 
ころころ変わる介護保険制度に振り回されるような業界では、子育て世代には「将来不安」がつきまとう。介護保険だけをあてにせず、それ以外の所からも利益を得るような、経営努力が必要だろう。当然、経営者は皆わかっているはずだが。
 
介護事業者がつぶれたり、離職者が多く慢性的人材不足が続いたりすることのないように願う。毎日ヘルパーさんを頼りにしている「認知症家族」としては。
 
いつまでもこの介護保険制度があるとは思えない。政府はあてにならない。福祉予算をこれからも保っていけるだろうか。予算がなくても「家族による無償の介護労働」があるからいいとでも。家族が支えられるのも限度がある。
 
今は一割負担ですんでいるが、健康保険のように二割負担、三割負担というように変更されていくだろう。年々高齢者が増加するのに税金が減少していくのだから。
 
これから、どうなるのだろうか。長生きしてよかった、と言える社会であってほしいと思う。残念ながら、今はそう言える人は少ないのでは。
                                   (2012年8月)