これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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これが認知症なんだ (231) 認知症家族

<That's Ninchi Show  No.231 >
 
認知症老人を介護する家族を「認知症家族」と略称することにする。
 
突然「介護」に引き込まれ、「家族なら誰でも介護できる」という誤った通念や責任感から、何もわからず介護技術もないままに、毎日「異次元老人」の対応に苦心する。かわってくれる人もおらず、逃げ出せば「老人介護放棄」、「ネグレクト」になってしまう。逃げることはできない。
 
認知症老人を一人にすると「生存」は不可能だから。逃げればそうなる。家族以外の誰かが救ってくれるならいいが。社会福祉とは名ばかりだ。昔のような地縁、血縁による相互扶助も消えてしまった。
 
逃げられないから囚人と同じだ。しかも、刑期が未定。有期刑ならガマンもできる。あと三年、あと二年というように解放される時期が確定していれば、心の持ち方が違う。悲しいことに、そうはいかない。認知症老人の寿命しだいで、いつ終わるかわからない、無期懲役だ。
 
その上、懲役の内容は毎年重くなる。労働時間も長くなる。要介護度が重くなるから。介護する側(囚人)も年齢を重ねていき、ひょっとすると、無期懲役終身刑になるかもしれない。解放される前に囚人のほうが先にあの世に行くことになれば。
 
毎日の労働はきつく、将来への希望も持てない、そういう閉塞感から「うつ病」にだってなる。労働の内容からも「うつ」になる。「異次元老人」の相手をするには、体力だけでなく、精神的にも疲れる。普通の人間ではうまく対応できないから。
 
ストレスがたまると、怒りがこみあげてくる。何も悪いことをしていないのに、無期懲役とは、すべてこの老人のせいだと。意味不明なことを言い、大声でどなり、近所に迷惑をかける、その頭の中は何が入っているのだろう。たたいたら古いテレビのようにもとに戻るのでは。たたくと、「老人虐待」だから、たたけないが。
 
そんな「認知症家族」に必要な条件を考えると、次のようになる。
1.体力        筋力、持久力、不眠不休に耐えられること
2.精神力      がまん強いこと、忍耐力
3.想像力      何を言っているのか不明な相手の要求を推測する力
4.知識と技術
5.経済力
 
これらが備わっている人がどれだけいるだろう。認知症老人の介護は極めて困難である。家族なら当然と思われているが、誰でもできるものではない。自分のできる範囲の中で、最善を尽くす、それでいいと思う。
                                              (2012年6月)
 
補足: 「認知症家族」に一番必要なものは、安心感を与えられるか、そんな心の余裕がなくても、
     そう見せかけることができるか、そのような気がしています。