これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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これが認知症なんだ (229) 傾眠傾向

<That's Ninchi Show  No.229 >
 
「傾眠傾向です」と言われても、普通の家族はぴんとこないだろう。
 
意識レベルには五段階あって、レベルの高いほうからだとこういう順番になる。
意識清明 → 通過症候群 → 傾眠 → せん妄 → 昏睡
 
老老介護をしている親戚がいる。認知症で車椅子の70代の夫(要介護4)を自宅で何年も介護している。車椅子の移乗も一人でこなす。そのために十年前にヘルパー講習を受けに行っているから。施設にはまかせられない、自分が倒れるまでは自宅で面倒をみるという覚悟だ。
 
その夫が「傾眠傾向です」と言われたそうだ。ということは、通過症候群と傾眠の間ぐらいと、そう解釈していいのだろうか。傾眠は、数分間などの極短い意識消失を指すと、施設の医師から教えてもらった。うちのおばあちゃんが肺炎になったときに。
 
「まだ通過症候群ということでしょう」と、心配しないように元気づけたつもりだったが、意識レベルが低下してきたということは何を意味するのだろう。脳の血流低下であり、脳の機能不全に近くなっているということだろうか。
 
それでもまだ自力で食事ができているから、最終段階(胃ろうで寝たきり)はまだまだ先だと思った。ところが一ヶ月後ぐらいに突然亡くなったという知らせがあった。食べ物をのどにつまらせて。脳の機能低下は嚥下障害をもたらしたようだ。
 
意識レベルが低下してくると、嚥下は困難になる。誤嚥による肺炎やのどに食べ物が詰まって窒息という、生命にかかわる危険性が高くなる。だから、施設や病院にいると、もう食べたり飲んだりはさせてもらえない。
 
嚥下困難だと医師が判断すると、点滴や経管栄養(経鼻チューブ、胃ろう)になる。どんなに本人が希望しても何も口に入れてはもらえない。うちのおばあちゃんもそうだったから。
 
「嚥下」が寿命を決める要素だったとは。生きるとは、息をしながら、食べること。窒息しないように食べ物をのみこむこと。それができなくなったら、終わる。そういうしくみになっているようだ。
                                       (2012年6月)