これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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これが認知症なんだ (223) 老老介護

<That's Ninchi Show  No.223 >
 
老老介護」は、「病老介護」でもあることが多い。
 
高齢になればいくつも持病があって当然だから、病気や手足の不具合をかかえながら「老老介護」をしているケースは少なくない。他にかわってくれる人がいないから、息子や嫁や娘に世話をかけたくないから、老人ホームなどの施設に入れたくないから、などなどの理由で。
 
認知症の70代の夫(要介護4)を在宅で介護している親戚がいる。何年か前にヘルパーの講習にも行っていて準備していたのはさすがだ。夫の世話は自分がするという覚悟のあらわれだろう。しかし、本人も70歳を超え、いくつも持病がある。数年前には手術で入院することもあった。
 
それでも、息子や嫁に迷惑はかけられないと一人で介護している。戦前や戦中に生まれた世代はそうなのだろうか。夫は妻が介護するものだという、責任感にしばられているようだ。その反対はないらしい。妻が認知症になった場合は、施設などのお世話になるのが当然だと。
 
施設に入所しているのは圧倒的におばあさんが多い。おじいさんよりおばあさんのほうが長生きだから、おばあさんだらけになっている、そう思っていたが、それだけでもないようだ。おじいさんは入所する必要がないのだろう。妻がいれば。
 
おじいさんは要介護になっても施設には入所しないのだろう。独身の人は例外として。在宅でおばあさんが世話をしている人がほとんどなのだろう。責任感や、慣例や、費用の問題や、施設への不信感や、世間体などの理由で。
 
面会に来ている人を見ればわかる。おばあさんの所に洗濯物を届けにきているおじいさんは何人もいる。が、おじいさんに届け物をしに来ているおばあさんは見たことがない。たまたま、この施設に限ってなのかもしれないが。
 
世話をしてくれるおばあさんがいないから、おじいさんはしかたなく入所している。そんな気がするのだが。そういう風潮ではないだろうか。
 
この年代の人は強い。息子や娘に面倒をかけたくないと言って一人でがんばる。娘には「そちらのご両親のお世話で大変でしょう、こっちは心配ないから」と明るくふるまえる。ほんとうは疲れ果てていても。
 
施設入所を勧めてみても、この年代の人はいい顔をしないだろう。施設に対する不安、不信感が大きい。老人達のクチコミで、あそこの特養(介護老人福祉施設)はひどいなどという施設の悪評ばかり聞いてくるからよけいに。
 
施設だって、いいのもあれば悪いのもある。自宅にいるよりもいい場合だってある。倒れるまでがんばるというような「老老介護」をなぜ続けるのだろう。「おじいさんの世話が、ある意味、生きがい」ということかもしれない。ひとは、役割がないと生きている実感がない。自分が誰かの役に立っているということが必要だから。
 
いくつになっても社会の中で役割を探し続ける、それが人間の一生なのだろうか。
 
                                      (2012年6月)