これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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これが認知症なんだ (221) 見通しが・・

<That's Ninchi Show  No.221>
 
認知症のその後」を知るには、施設に行ってみるのが一番だ。
 
発病はいつも突然で(実際はそうではないが、前兆に気がつかない)、家族があたふたしているうちに認知症は次の段階に進んでいく。介護度が上がっていくとどうなるのだろう、いつまで生きられるのだろう、そんな心配が出てくる。
 
厚生労働省のサイトには、「数年から十数年で寝たきりになり、口から食べ物を摂取できなく(嚥下力の低下)なって、肺炎(誤嚥性肺炎)を繰り返して亡くなる」というようなことが書かれている。具体的にはどうなのだろう。各段階での経過は。
 
病状と同様に、経過についても個人差が大きいから、医師など専門家にたずねても明確な答えはない。病例集などや、統計データが手に入るわけでもない。先の見通しができないほど不安なものはない。何か参考になるものはないのだろうか。
 
おばあちゃんが老健(介護老人保健施設)に入所して、何回も面会に行っているうちに「これだ」と気がついた。施設に行けばいいと。グループホームは例外だが、他の施設には、ほぼ全ての段階の認知症老人が一堂に暮らしている。一度に全てのレベルの参考例が目に入ってくる。
 
認知症のレベルが全てそろっていることに加えて、他の病気もそろっている。高血圧、糖尿病、脳血管障害(脳卒中)などの認知症を引き起こす原因になった病気はもとより、心臓病や腎臓病などのそれ以外の病気も、高齢だとほとんどの人が何かしら合併症として持っているからだ。
 
運動能力についても、ほぼ全てのレベルの人がそろっている。普通に歩ける人から、車椅子や、寝たきりの人まで。次はどうなるかというのを、一度に最終地点(胃ろうで寝たきり)まで見渡すことができる。
 
最終地点に近い人を見て、少し安心できた。手足が自由に動かせなくなり、ほとんど寝たきりの人でも「鯉のぼり」の歌を正確に歌っていたから。リビングで元気な老人が歌っているのに合わせて、寝返りもできない人が寝たままベッドで歌っていた。
 
寝たきり同然になると、すぐに、言葉を忘れ、誰が誰だかわからず、意思疎通もできず大声でわめくだけになると思っていた。が、すぐといういうわけでもないようだ。これがわかっただけでも違う。個人差もあるだろうが、多くの人は職員さんの区別はついており、会話もできている。実際に見てみないとわからないことは多い。
 
認知症を知るためには、「認知症家族」ならば、機会があれば施設に行ってみるといいだろう。どこでも見学は可能だし、知り合いが入所していたら面会は自由だから。教えられることは多い。知らないと不安だが、知れば何の不安もない。
                                   (2012年6月)