これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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これが認知症なんだ (218) 大部屋

<That's Ninchi Show  No.218
 
介護度が重度になると、個室でも大部屋でも同じかもしれない。
 
認知症が進んでくると、個室にこだわる意味がないように思える。自分でトイレに行けないで、完全にオムツに頼る場合はそうだろう。一日中、ベッドにいるわけで、隣の人を見ようにも、寝返りできないから見えない。一人でいるのと大差ない。声は聞こえるが、何を言っているのか理解する能力はないから、やはり一人でいるのと同じだ。
 
少しレベルが軽い場合は個室がいい。トイレまで歩けるレベルなら。ポータブルトイレがずらっとベッドサイドに並んでいるのは見ていて気持ちのいいものではない。自力で少しは動けるから、食後の自由時間には雑誌を読んだり、歌詞を見ながら歌っていたり、雑談していたりする。他人にじゃまされない空間が必要だろう。
 
「寝たきり」に近いレベルになると、ベッドで天井を見ているだけのことだ。こうなると、個室よりも、同室者がいる大部屋のほうがいいこともある。うちのおばあちゃんがそうだった。同室者がいると、「いる」ということだけで何か安心するらしい。
 
二人部屋だが、当初は一人だった。一人のときは不安感が強く、ナースコールを乱発していたそうだ。特に何の用事もないのに。しばらくして、同室者が入所してきてからは落ち着いた。ナースコールを一切しなくなった。(ナースコールの方法を忘れてしまったという可能性もある)
 
職員さんの話では、同室者がいるからといっても、二人でしゃべっているわけではないそうだ。話をしている様子はないらしい。認知症老人と認知症老人の間では、会話は無理だろう。どちらも一方的に自分の言いたいことだけをしゃべるから、双方向の情報伝達はできない。
 
それでも近くにいつも誰かがいる、その気配だけで、なぜか安心するようだ。認知症老人は孤独で「さみしい」し、「何もできない」とか「何もわからない」とかいう不安感があるから。「いつも誰かがいる」というのは案外大きな意味を持つのかもしれない。
                                     (2012年6月)