これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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これが認知症なんだ (214) 胃ろうでも

<That's Ninchi Show  No.214 >
 
「胃ろう」造設した場合、栄養状態は良好なはずだ。肺炎にも勝てるのでは。
 
老人が肺炎でなくなるのは、老化で免疫力が弱り、その上に咀嚼力や嚥下力が衰えていて、食事が十分に摂れず、消化吸収力も低下し、栄養状態が悪いからだろう。それなら、胃ろうで栄養状態が良好なら、肺炎にかかっても克服できるはずだ。
 
ところがそうとも言えないらしい。おばあちゃんの胃ろう導入を考えていたころ聞いたのだが、胃ろう老人の最期も肺炎が多いそうだ。何回も誤嚥性肺炎を繰り返し、高熱で苦しみながら逝くということだ。
 
老人は感染症にかかっても高熱が出ないことが多い。栄養不足でそれだけの熱をつくり出すことができないから。(そういう理由で微熱でも感染症を疑う必要がある。)胃ろうで十分な栄養が与えられていると、何日も高熱を出せるということだろう。苦しみがそれだけ長くなる。
 
長く苦しんでも、栄養状態がいいから回復するだろう。ただ回復しても、そこは老人だから一度寝込んだらもとのようには戻らない。何段階か体力を落とし、認知症は進み、身体機能は衰える。これを何回も繰り返して最期を迎えるのだろう。
 
胃ろうが付いていると、延命できるのは確かだ。一度や二度の肺炎で逝ってしまうことはないだろう。寝たきりで起き上がることもなく、しゃべることも笑うこともなくても、栄養状態がいいから長生きできる。しかし、苦しみが何度も何度もあるというのはどうだろう。長生きして苦しいのでは何のために延命するのか。
 
胃ろうを付けないと、餓死する。付けると苦しみながら逝くかもしれない。もちろん胃ろうを付けて元気になり、リハビリして胃ろうをはずせる人もいる。何が適切かは、医療も介護も素人の家族がわかるわけがない。相談しようにも、手術を勧める外科医がわかるはずもない。胃ろう手術を受けたらすぐに退院していくのだから、その後どうなったかなどとは。
 
「術後の誤嚥性肺炎についてはどうなのでしょうか」とこの外科医に聞いたら、「誤嚥性肺炎の危険はあります。が、栄養液を入れたあとに寝かせずに座らせておけば心配ないでしょう。あふれることはないから。」という答えだった。栄養液が胃の容積よりも多いと、食道にあふれて、誤嚥する危険もある。それ以外の説明はなかった。
 
医療と介護の連携がなされるべきだろう。手術を勧めるなら、手術した老人のその後をいくつか家族に示してもらいたい。具体的に考えられるように。それは病院では無理かもしれない。病院のケースワーカーさんには荷が重いことだろう、介護の現場を知らない人では。
 
何の情報提供もなく、時間的余裕もなく、選択を迫られる家族のことを考えてもらいたい。医師は質問したことだけに答える。それ以外の特にマイナス面の情報は出てこない。わからないから言われるままに胃ろうを選択しているのではないだろうか。
 
                                                   (2012年6月)