これが認知症なんだ (317) 知らないと
<That's Ninchi Show No.317 >
情報不足、知識不足から誤解が生じる。
施設の体操指導の様子を見たことがある。まだ手足を動かせることができる老人たちを集め、職員さんが一人前に立って体操の見本を示していた。
見本を見せても、そのとおりにできている老人はほとんどいない。それらしい動きの人もいるが、ただ立っているだけの人や、よそ見をしている人、おざなりに手足をばたつかせているだけの人など、まったくやる気のないような人が多かった。
これでは少しも運動にならず、リハビリの効果など望めないと思った。体操の指導にもっと気を入れてくれたらいいのに、指導するほうにやる気がないのではとも思い、「だから施設は・・」という気持ちにもなった。
今から思えば大きな誤解だった。これについて苦情を言わなくてよかったと思う。
認知症とは脳機能障害によるもので、脳の「やる気」分野が機能不全になっていたら、どんなに「熱血指導」をしても、やる気がないのだから体操ができるわけがない。
また、「他人の動作をまねる」という部分に障害があれば、目の前で体操を見せてくれても、同じ動作ができない。ただ呆然と見ているしかない。
体操の時間に、体操ができている老人がいることのほうが珍らしくて、「できていない」のが普通、そう考えるべきだった。参加しているだけでいいと。
今なら、体操のおにいさんの動きを目で追っているだけでいい、十分それで脳の刺激になっていると、そういうふうに理解できる。以前のように無意味だとは思わない。
知らないということは誤解を生みやすい。無知なばかりに、不満に思うこともあり、恨みに思うこともあるだろう。施設やヘルパーさんへの不満のいくつかはそれだ。