これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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これが認知症なんだ (152) 通院

<That's Ninchi Show  No.152 >
 
認知症のせいかどうか、「行きたくない」と言ってきかない。
 
発病以来、どこにも行きたくないという「ひきこもり」傾向がある。一日中老人マンションの自室のベッドに寝ている。何もしたくないらしい。が、病院(開業医も)だけは別だった。(この間までは。) 自分から歯医者に行きたいと言ってうるさかった。
 
連れて行く側の都合などおかまいなしに、「明日行くから」とか言い出したらきかない。同じように、耳鼻科とか、皮膚科にも「連れて行って」と言われ、何回か連れて行った。特に悪いところがなかったときもあった。
 
それだけ自分の身体のことはいつも心配し、関心を持っていたようだ。発病前は特にそうだった。毎日のようにどこかに通院していたから。
 
ある日、担当のケアマネージャーさんから電話が入った。おばあちゃんを泌尿器科に連れて行ったほうがいいと言う。トイレ介助のヘルパーさんの話では、最近なぜか尿の出が悪く、とても時間がかかる、それが心配だと。
 
本人はどうかというと、何とも思っていないようだ。ヘルパーさんが心配しているだけで、本人は「病院に行きたい」とも「どこか悪いのでは」とも言ってないらしい。
 
認知症では、自分の症状も言えない。言う前に、忘れる。まわりの者がそれだけは特に注意をして見ていてあげないと、病気を見逃すことになる。
 
認知症老人は痛くても「痛い」と言わない(言えない)のだということを。
 
脳梗塞の再発で、以前より「むせる」ことが多くなって、水を飲むのがいやになり、飲む量が減っていることだろう。それで尿量も減ったのでは?
 
それか、脳の問題。脳や尿意を伝える神経系に異常があるのでは? 尿がないのに、尿意がある。または、「時間だから」尿が出ると思い込んでいて、トイレに長時間座っている。認知症だと、それも考えられる。
 
ただ、「認知症だから」とすませると、何か病気が隠れていることもある。「認知症だから」というのを切り離して、視野を広げて考える必要がある。前年の脳梗塞の再発の時のように。この時はケアマネージャーさんだけが気がついて、命拾いした。
 
認知症だから」でないとすると、膀胱や尿管に、または排尿に必要な筋肉に異常があるのだろうか。それならば、専門医にみせないと。いつもの訪問診療の内科医の先生では専門外でわからないだろうし、診断できないだろう。
 
訪問診療の先生はどう言っているのか、専門医にみせるようにという意見なのか、それを先ず確認することだ。ケアマネージャーさんが連絡をとってくれた。
 
結果、訪問診療の先生の見解も、ケアマネージャーさんと同様だった。やはり一度は専門医の診断が必要だということだ。
 
ケアマネージャーさんが、近所の泌尿器科に予約を入れてくれ、連れて行ってくれることになった。本来は家族の役目だが、遠方だということで配慮してくれて、本当にありがたいことだ。ところが、認知症老人は困ったもので、当日になってキャンセルすることになった。
 
おばあちゃんが「病院はいやだ、絶対行きたくない」と言い、泣き、わめき、暴れてどうしようもなかったそうだ。そうなるともう何もできない。
 
前のケアマネージャーさんだったら言うことをきいたかもしれない。入居から三年間、毎日何度も様子を見に来てくれていて、おばあちゃんもこの人をとても気に入っていた。家族以上に信頼していたので。
 
認知症老人の対応は困難が多い。通院がこれほど困難だとは。どうしたものか。
 
                                    (2012年3月)