これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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これが認知症なんだ (147) 老後の住まい

 
<That's Ninchi Show  No.147 >
 
座って、または車椅子で「できる」。そういう配慮があれば、老人もラクに暮らせる。
 
この社会は、働いてお金を稼ぎ、それを使う、そういう人々が中心にあり、当然、その人々に合わせて社会を構成するいろんなものが作られている。住まいも、多くはそういう若い人向けにできている。老人マンションなどを除いて。 
 
足が悪くなると、それまで簡単にできていたことが、苦痛になる。
 
台所仕事、立ちっぱなしで一時間など無理。
着替え、片足で立ったままパジャマのズボンをはくなど不可能。
低い洗面台にかがみこんで顔を洗うのも、腰が痛い。
玄関、立ったまま靴など脱げない。立ったままで靴をはくことも同じだ。
が、低い床に座り込んで脱ぐと、また立ち上がるのがつらい。 
 
おばあちゃんの老人マンションは、ミニキッチンも洗面台も、車椅子で使えるようになっている。洗面台は一般のマンションのような引き出しなどの収納がない。洗面台の下に足がはいるだけのスペースがあり、椅子を置いて座って洗面ができる。
 
おばあちゃんは、介護用の風呂椅子を置いて使っている。背もたれのあるのと、ないのと両方買ったから。(マンションの浴室は狭いので、背もたれのない方を入浴用にした。) 
 
背もたれのある椅子は、お風呂あがりに服を着るときに使う。座ってゆっくり着る。動作が遅いし、以前のように立ったままで着替えはできないからだ。
 
自宅の洗面脱衣室では、普通のパイプ椅子を置いて使っていた。ところが、ある日座りそこねたのか、バランスをくずして転倒し、それで介護用の風呂椅子をもう一脚買い足したというわけだ。介護用は高いだけあってしっかりしたつくりだ。
 
マンションのミニキッチンは下部の収納部分がとりはずせるようになっている。車椅子でも、炊事ができるように。おばあちゃんはもう炊事はできないから、そのままにして収納に使っている。
 
これ以外は、吊り棚とクローゼットしか収納はない。ゴミ袋や洗剤、ペーパー類を入れる所がないからだ。マンションは「25㎡」という狭さだから。
 
「介護が必要になっても在宅で」という時代の風潮だが、「今の住宅」は老人が暮らしやすいような住まいではない。ユニバーサルデザインと言われるものは、住まいにはまだ浸透していない。リフォームすればいいというかもしれないが、費用は?
 
これから家を建てるときは、どんなに若くても「車椅子でも暮らせる家」を作っておくほうがいい。十数年前、大地震で壊れたおばあちゃんの家を再建するときには考えもしなかった。トイレ、浴室、玄関に手すりを付けただけだ。若いときには介護のことは頭にない。あとの祭りだ。
 
自分が車椅子で生活をする、そんなことは誰も思っていないし、考えてもみないだろう。しかし、 いくつか施設を見ても、リビングにいるのは車椅子の老人ばかりで、歩ける人は少ない。あとは、自室で寝ている。
 
「長寿時代」ではあるが、「元気で長生きする」時代ではない。医療のおかげで、脳卒中などで亡くなることは少なくなったが、もとの身体で退院できるわけではない。そこまで医療は進歩してはいない。もとのように歩いて退院できるなら、問題はない。
 
車椅子や寝たきりで長生きする時代、歴史的に言えばどうなのだろう。今までの人類史では考えられない。あり得ないような時代になっていると言える。前例のない時代、歴史に学べない時代だ。困難をどう解決したらいいのだろうか。