これも認知症なんだ<That's Ninchi Show 2>

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これが認知症なんだ (146) 生活リハビリ

<That's Ninchi Show  No.146 >
 
靴をはく、そんな生活上の単純な動作もリハビリの一環になるそうだ。
 
おばあちゃんは、毎日昼食と夕食の二回、自室から一階の食堂まで歩いて行く。いつもヘルパーさんに付き添われ、「一、二、一、二、」と声をかけられながら。
 
この移動だけが、唯一の運動だ。他に身体を動かすことといったら、週に二回、訪問リハビリがあるだけだから。「食堂に行く」ことは、「歩行リハビリ」ということだ。
 
毎日、毎回、付き添いのヘルパーさんは交替する。若い人や、おばさん、もしかすると孫もいるような年配の方も。特に「介護拒否」がひどくなってからは年配の人ばかりになった。やはり若い人には敬遠されているようだ。
 
認知症だと、新しいことは覚えられないと思ったが、どうやらヘルパーさんは特別なようだ。毎日世話をしてくれるからだろうか、おばあちゃんは何人ものヘルパーさんの名前を覚えている。
 
「さっきの人は?」と聞くと、しばらく考えて、「山本さん」。正確に覚えていた。全員、名札を付けているから、覚えようとすれば覚えられる。(普通の老人なら)
 
が、認知症ではついさっきのことも忘れるのでは? もうとっくに読み書きはできないことからすると、漢字も忘れているだろう。記憶できることと、できないことがある。
 
不思議なことに、「あとは、どんな人が来てくれるの?}と聞くと、「田中さん、高橋さん、佐々木さん、・・・」など、かなりの人数の名前が出た。これには驚いた。
おじいちゃんの命日はすっかり忘れているのに。もう何年も。
 
おばあちゃんはヘルパーさんの好き嫌いもある。好きなヘルパーさんの場合は、嫌いな入浴も、文句を言わず、抵抗もせず、言うことを聞くらしい。認知症でも、この人はこう、あの人はどう、というような区別がつくとは。やっかいだ。
 
入居当初、若くて熱心なヘルパーさんが毎日来てくれていた。おばあちゃんもこの人は仕事が丁寧だと、とても気に入っていた。「毎回、靴もはかせてくれる」と言って。
 
老人用の歩きやすい靴で、はきやすいようにマジックテープ式になっていて、はかせてもらわなくても、自分でできる。家族は誰も、はかせたりしていなかった。
 
年配のヘルパーさんは靴を足元にそろえてはくれるが、はかせてはくれないらしい。
 
老人マンションの自室の玄関には、椅子が設置されているから、足が悪い老人でも、座ってラクに靴を脱いだり、はいたりできる。できることは「してもらう」方針だ。
 
リハビリという点では「靴をはかせる」のは誤りだろう。自力でさせるのが老人本人のためになる。自力でできることを続けさせる、それが運動能力(生活上の動作の)の保持につながるから。
 
それがいいとわかっていても、老人がもたもたしているのを見ると、つい靴もはかせてしまう。訪問介護の時間も限定されているから。その気持ちもよくわかる。